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GDP改定値上方修正 たまる消費マグマ、爆発期待も…

 1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は上方修正されたが、新型コロナウイルスの緊急事態宣言で4~6月期も低迷が続きそうだ。ただ、8日に職場接種の申請が始まるなど、海外に比べて遅れていたワクチン接種の体制整備が徐々に進み、市場も経済の正常化による消費回復を織り込み始めた。コロナ禍の財政支援や消費抑制で家計が蓄えた貯蓄は20兆円超に上るとされ、今秋以降には消費を押し上げる可能性がある。

 「大幅なマイナス成長に変わりはなく、持ち直しの動きがいったん途切れた」

 第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは1~3月期改定値をこう総括する。4~6月期は海外経済の回復で好調な輸出が下支えし、2四半期連続のマイナス成長は回避されるとみるものの、個人消費の落ち込みで停滞感は強い。

 一方、足元はワクチン接種が予想を上回るペースで進み、光明も見え始めた。感染者の減少が明確に現れれば、重症化リスクが高く家に閉じ籠もっていた高齢者を中心に消費が活性化するとみられ、「2021年度後半から景気は上振れる可能性が高い」(新家氏)。

 総務省がまとめた20年度の家計調査(2人以上の勤労者世帯)では、一律10万円の特別定額給付金の支給で可処分所得が前年度比4.0%増えたのに比べ、外出自粛の影響で消費支出は4.7%減った。所得に対し貯蓄が増えた割合を示す平均貯蓄率は35.2%と3.2ポイント増加し、家計がお金をため込んだのが分かる。

 政府は「20兆円超の追加的な貯蓄が残っている。外出、移動が正常化すれば、これまで我慢していた部分が出てくる」(西村康稔経済再生担当相)と胎動する消費のマグマに期待する。8日の東京株式市場ではセレクトショップ大手のユナイテッドアローズが年初来高値を更新するなど、回復シナリオを織り込む形で内需関連株も買われている。

 だが、米欧に比べてワクチン接種が半年遅れた影響は尾を引きそうだ。現在の宣言が6月20日に解除されても、接種率が高まるまで感染拡大や再度の宣言発令を繰り返す恐れはある。海外経済の急回復を受けた原油など国際商品の価格上昇は回復が遅れた日本の消費をさらに冷え込ませそうだ。

 何より懸念されるのは、政府のワクチン政策が再び混乱して接種加速の方針がほごにされることだ。景気回復の期待感が裏切られた場合、日本株や円が市場で売り込まれる「日本売り」が改めて加速しかねない。 (田辺裕晶)

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