海外情勢

「戦略安定対話」合意、サイバー攻撃も協議開始 米露首脳

 【ジュネーブ=黒瀬悦成、小野田雄一】ジュネーブで16日に初の直接会談を行ったバイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は会談後、自国の報道陣らを前にそれぞれ記者会見し、米露の新戦略兵器削減条約(新START)が2026年に期限切れとなるのを視野に、軍備管理メカニズムの構築に向けた「戦略安定対話」を「近い将来に発足させる」と発表した。

 両首脳は会談後、「戦略的安定に関する共同声明」を発表し、「核戦争による勝利は存在せず、決して核で戦ってはならない」との基本原則を確認した。声明はまた、戦略安定対話について「将来の軍備管理とリスク低減措置の土台作りを目指す」と位置付けた。

 バイデン氏は対話について「実用化が進む危険な最先端兵器(の管理)が対象となる」とし、「対象兵器の詳細についても話し合った」と明らかにした。

 具体的な兵器には言及しなかったが、米露が開発を進める極超音速兵器などが対象となるとみられる。

 プーチン氏によると、米露関係の悪化を受けて両国がそれぞれ帰国させていた大使を相手国に復帰させることでも一致した。

 一方、ロシア国内から米政府機関や米国の重要権益にサイバー攻撃が展開されている問題に関しては、サイバー空間での安全保障体制の構築に向けた協議を開始することに合意した。

 ただ、プーチン氏は米国へのサイバー攻撃にロシア政府は関与していないと主張。逆に「米国発のサイバー攻撃が世界で一番多い」と述べ、米国に責任を転嫁する姿勢を示した。

 対するバイデン氏は、ロシア政府が米国へのサイバー攻撃に関与すれば「私が(報復)行動をとることをプーチン氏は知っている」と指摘し、ロシアが米国などへのサイバー攻撃や民主主義諸国への選挙干渉を繰り返せば「世界におけるプーチン氏の信用度は縮小する」と警告した。

 バイデン氏はまた、ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が拘束・収監された問題に関し「米国は人権問題を常に提起し続ける」と強調。仮にナワリヌイ氏が獄中で死去すれば「ロシアにとっては破滅的な結果が待っている」と述べ、制裁措置をとる構えを示した。ただ、プーチン氏は「その人物は法律に違反した」と語って対応を正当化した。

 プーチン氏はさらに、米露関係が悪化した責任は全て米国にあると断じ、国際慣行に反する同氏の行為を追及するバイデン氏への対抗意識を鮮明にした。

 ホワイトハウスによると、会談は休憩をはさんで実質3時間におよんだ。

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