海外情勢

プーチン氏 米と協調模索も「一線」譲らず

 【ジュネーブ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は16日のバイデン米大統領との首脳会談で、核軍備管理など米国と利益が一致する領域では協調する意欲を示しつつ、双方には互いに譲れない「一線」があると指摘。露国内の人権侵害を非難する米国に内政干渉と反論するなど、米国と渡り合える「強国」を示すことに成功した。。

 プーチン氏は会談後の記者会見で「会談は建設的だった」と評価した。核戦力の均衡などを念頭に置いた「戦略的安定」をめぐる対話の開始は、プーチン氏にとって成果だ。国力差のある米国との本格的な軍拡競争を避けられる可能性が高まる上、米国に匹敵する核大国としてロシアを印象付けられるためだ。

 バイデン氏の米露関係を予測可能にするとの考えには、米露の立場の違いを容認するものとして原則的に賛同しているとみられる。プーチン氏はトランプ前米政権による中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄などを挙げ、米国こそが予測不可能だったと指摘。バイデン氏を「バランスの取れた人物」と評した。

 サイバー空間の安全保障に関する協議開始は露側が事前に提案するとしていたもので、プーチン氏は米国の同意を得られたことに満足感を示した。

 ただ、プーチン氏はサイバー攻撃への国家としての関与を改めて否定し、「世界一のサイバー犯罪大国は米国だ」と主張した。サイバー攻撃をめぐる協議に前向き姿勢を示したのは、ロシアへの非難や制裁の矛先をかわすためとの見方もあり、サイバー犯罪をどこまで本気で取り締まる意思があるかは不透明だ。

 露反体制派指導者のナワリヌイ氏収監や反体制デモ弾圧などロシアの人権状況に関しては、米国の改善要求を拒否する姿勢を明確にした。プーチン氏はデモ弾圧について、1月の米連邦議会議事堂が一時占拠された事件などを引き合いに出し、「ロシアで暴動が起きることは望まない。われわれはそのために必要なことをする」と正当化した。

 プーチン氏は米議会の動きを念頭に「米国にはロシアとの関係発展に反対する人々がいる。米国が新たな対露制裁を行えば(関係再構築の)機会の喪失を意味する」と牽制(けんせい)。米露関係には「幻想(楽観論)を過去に持ったことはなく、今後も持つことはない」とし、バイデン政権の今後の出方に警戒を緩めなかった。

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