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「1日100万回」着々 目標達成へ若者接種カギ

 新型コロナウイルスワクチンの接種回数が、菅義偉首相が掲げた1日100万回に近い水準で進んでいる。首相官邸の発表では9日の医療従事者と高齢者の接種回数は計約94万回だったが、高齢者分はワクチン接種記録システム(VRS)への登録を後日行う自治体もあり、すでに1日100万回を超えた可能性もある。首相は希望者全ての接種が「10~11月」に完了するとの見通しを示すが、今後は消極的とされる若者の接種拡大がカギとなる。

 首相は17日の記者会見で「直近1週間では730万回、1日平均100万回を超えるペースで(接種回数が)増え続けている」と強調した。首相が誇った「1日100万回」は前日発表分からの増加分の数字だ。

 一方、河野太郎ワクチン担当相は20日の日本テレビ番組で、実数として「1日100万回は達成してるのではないか」と語った。日別の高齢者接種の回数は自治体のVRSへの登録が基準で、1週間たっても数万単位で接種回数が伸びるケースもある。9日の約94万回も接種1週間後の16日時点から17日時点までに約2万8千回伸びた。

 首相が5月に掲げた1日100万回の目標は当初、与野党から疑問視する声が上がった。首相官邸の幹部でさえ「正直、高い目標を掲げたなと思った。ちょっと難しいかもしれないと思った」と振り返る。

 しかし首相はこれに先立つ4月、武田良太総務相に自治体の接種体制構築の支援を指示。必要な支援内容を聞き取り、接種完了見通しを各自治体に確認した。総務省は自治体の予算や人事に大きな影響を及ぼすだけに、同省からの「聞き取り」は「圧力」とも受け止められた。

 総務省は各自治体に目標の達成に取り組むよう要請。聞き取った要望をもとに政府は臨床検査技師らによる接種を可能にし、最大の懸念だったワクチンの打ち手の確保に取り組んだ。

 「本当によくやってくれている」。首相は最近、周囲に総務省の働きぶりをこう評価した。武田氏も周辺に「(総務省職員が)みんな使命感をもって取り組んでくれた」と振り返る。

 こうした中、21日からは職場や大学での接種も本格的に始まる。ただ、高齢者らに比べ、若い世代は副反応への警戒感から接種に消極的だとされる。

 若い世代は高齢者よりも重症化しにくい傾向があるが、一般的に日常の活動が活発な若い世代の接種が拡大しなければ、全体の感染防止効果も薄れる。河野氏も11日の記者会見で「若者向けの啓発活動に力を入れていきたい」と語った。

 首相は17日の記者会見で、東京都の新規感染者の半数近くを20~30代が占めているとして「今後、若い方々も含め希望するすべての対象者への接種に政府挙げて取り組んでいく」と強調した。政府内には「10~11月」完了を掲げる首相の目標よりも「もっと早く達成させたい」との声があり、若い世代への呼びかけがポイントとなる。

(大島悠亮、児玉佳子)

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