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ASEANの脱炭素へ1兆円支援 エネルギー相会合を初開催

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国のエネルギー相は21日、オンラインによる特別会合を開き、日本がASEAN各国の段階的な温室効果ガス削減を支援していくことで合意。梶山弘志経済産業相は、各国の省エネ事業などに向けて100億ドル(約1兆1000億円)の金融支援実施を改めて示した。中国も参加する20カ国・地域(G20)の気候変動関連会合を控え、新興国の温暖化支援で主導的役割を果たしたい考えだ。

 梶山氏は会合で、各国の事情を踏まえ、あらゆるエネルギー源や技術を活用しつつ、現実を見据えた「(段階的な温室効果ガス削減の)エネルギー・トランジションが重要だ」と強調。共に脱炭素に取り組む姿勢を示した。

 今回の支援策「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」は、水素など次世代エネルギーの活用で急速に脱炭素化を図ることが難しいASEAN各国に、削減に向けた工程表の策定支援や、環境技術開発を支援する日本の2兆円基金による開発成果をASEAN各国にも展開することを約束した。

 ASEANが日本と開くエネルギー相会合は、昨年11月にもオンライン開催した日本、中国、韓国の3カ国との枠組みなどもある。日本のみと開催するのは初めてで、日本が呼びかけて実現した。

 英国で11~13日に開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、途上国の気候変動対策を支援していくことが首脳間で確認され、菅義偉首相は日本としての支援を表明。アジア諸国で唯一G7入りしている日本としてASEANと協調し、国際社会に約束を果たす姿勢を明確にする狙いがあるとみられる。

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 21日開催された日ASEANエネルギー相特別会合では、ASEAN各国が2050~70年に脱炭素を達成する場合のコスト分析結果も公表された。国際機関「ERIA」(東アジア・アセアン経済研究センター)によると、ASEAN各国が70年の脱炭素を目指す場合、追加コストとして70年時点でASEAN全体の対国内総生産(GDP)比約4・8%相当の約100兆円に上ると試算。電力料金も約3倍となるため、単なる脱炭素化の追求では経済成長を妨げるとした。

 ただ、蓄電池や大気から直接、二酸化炭素(CO2)を分離・回収する「DAC」、水素製造の技術コストがすべて低減できれば、追加コストは約67兆円に抑えられるとの試算も示した。

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