海外情勢

「香港人と進めた」 蘋果日報が最後に伝えたこと

 休刊が決まった香港の蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)は最後の紙面となった24日付朝刊1面トップに「香港人、雨の中でつらい別れ」と題した記事を掲載した。要旨は次の通り。

     ◇

 本日、蘋果日報の最終章を書き、香港に別れを告げる。26年間の美しき戦いが終わった。残念だが、感謝している。私たちは香港人とともに進むという初心を最後まで持ち続けた。

 警察は会社の幹部を逮捕し、主筆の楊清奇を拘束した。そして取締役会はスタッフの安全を考慮し、業務の停止を決め、本日が最後の朝刊発行となった。史上最高の販売記録となる100万部を目標に掲げた。

 26年間、ともに歩み、温かい支持をくれた全ての読者や香港人に感謝する。記者やスタッフ、広告会社など全ての信頼に感謝する。創業者の黎智英(れい・ちえい)も「同僚の(休刊の)決定は十分理解できる」と話していた。

 香港記者協会は蘋果の休刊に「強く心が痛む」と表明し、休刊は決して自らの経営能力のなさなどではなく、制御不可能な原因から来るものだったとした。逮捕された人を含め、「全ての人生の歩みを心に留め置くべきだ」とした。

 同協会は、蘋果が創刊以来、記事で香港人の視野を広げ、メディア界を前に推し進めてきたと説明。「蘋果の終わりは業界の損失。メディア人が恐怖を感じずに働けるよう、私たちは政府に報道の自由を呼びかけていく」とした。

 人権団体「民権観察」や世論調査などを行う「香港民意研究所」のメンバーらは「蘋果は香港人の生活の一部。(休刊が)メディア界の重要な歴史の一つだ」「蘋果の声は非常に重要だった。またいつの日か見られる日を願っている」などの声を寄せた。

 昨日の香港は一日中、大雨だったが、雨にも負けずに人々は本社ビル前まで来て別れを告げた。ある人は花を持ちながら写真を撮り、ある人はヒマワリの花と手紙を持ってきた。

 そのヒマワリは雨風でも枯れずに、蘋果のスタッフに届けられた。夜になるとより多くの読者が駆けつけた。そして同時にライトを照らしながらスタッフに向かい、高らかに叫んだ。

 「私たちは蘋果を支持する」

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