東京都議選は、小池百合子知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が議席を減らす一方、自民党は改選前議席を上回る展開となった。自民は選挙協力した公明党と合わせて都議会の主導権を握る狙いだったが、都民ファも一定の勢力を維持した。自公と都民ファのつばぜり合いにより、議会運営は不安定になるリスクをはらむ。
都民ファの勢力が一定程度減少することは、選挙前から予想されていた。自民はそれを見越し、昨年から次々と手を打ってきた。その一つが、都民ファと協力関係にあった公明の「引きはがし」だ。自民のある古参都議は「都民ファの弱点は公明党。公明と自民が手を握れば小池知事への大きな牽制(けんせい)になる」と語った。
昨年12月、都民ファは新型コロナウイルス感染症対策条例の改正案を議会に提出したが、公明党の反対でいったん取り下げた。今年3月の都議会に再提出し、共産党の賛成を得て可決した。「これで、公明と都民ファの溝は決定的になった」(関係者)。その後、公明は都議選を前に自民との協調にかじを切った。
自民も、都議会では小池氏に厳しい質問を投げかけはするものの、決定的な対立は避けた。選挙直前には、自民サイドから小池氏に都民ファへの過度な肩入れを控えるよう求めたほか、自民候補者とのツーショットポスターを撮影する動きまであったという。昨年以降、自民都議団による政策要望の場に小池氏本人が姿を見せる場面も増え、小池氏サイドも自民との関係修復を模索した。
今回の選挙結果を受け、こうした動きは維持される見通しだ。選挙後には臨時議会が開かれ、正副議長らが決まる。9月にはいよいよ定例会が始まる。スムーズな議会運営を目指したい小池氏と、政策を都政に反映させたい自民・公明両党。互いの利害は一致しており、当面は小池氏との決定的な対立を避けつつ、是々非々の姿勢が続くとみられる。
ただ、選挙戦で真っ向からぶつかった自民と都民ファは決して相いれない。都民ファは議席を減らしたとはいえ、小池氏の影響力を改めて見せつける形で存在感を発揮した。何かのきっかけで議会内の対立が激化する可能性は十分にある。都議会としては、3党に対する小池氏の十分な“目配り”を求めつつ、くすぶる火種をいかに炎上させないか、慎重な運営が求められそうだ。(大森貴弘)