国内

岸田派、結束維持に腐心 石破派は反転策見えず

 自民党の岸田派(宏池会、47人)と石破派(水月会、17人)が8日、東京都内でそれぞれ政治資金パーティーを開いた。昨年秋の党総裁選では、派閥を率いる岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長が菅義偉(すが・よしひで)首相に敗れた。その後、両派は勢力後退の危機に直面しており、次期総裁選へ向けて派内の結束を維持できるかが焦点となる。

 「衆院選で何としても勝利を得なければならない。宏池会としても候補者全員の当選を目指していく」。岸田氏はパーティーで衆院選に向けての決意をこう語った。岸田派が特に重視しているのは、座長を務める林芳正参院議員の山口3区へのくら替え出馬だ。

 ベテランで政策通の林氏は、岸田氏にとって派閥領袖(りょうしゅう)の地位を脅かしかねない存在だが、支援に及び腰となれば派内で求心力を失う可能性があり、6月30日放送のラジオ番組では「同志としてしっかり応援したい」と表明した。

 その岸田派の前に立ちふさがるのが、二階俊博幹事長が率いる二階派(志帥会)だ。両派間では静岡5区でも公認争いが激化しているが、山口3区では二階派現職の河村建夫元官房長官が立候補を予定しており、二階氏は「現職優先であることは間違いない」と林氏の動きを牽制(けんせい)する。

 岸田派では次期衆院選を前に三ツ矢憲生、宮腰光寛両衆院議員が引退を表明。後継には岸田派とはかかわりが薄い候補者が立候補する可能性が高い。派閥の勢力後退が危惧される中、岸田氏が二階氏の重圧などをはねのけ、多くの仲間を当選に導くことができなければ、総裁選への再挑戦は難しくなる。

 派閥領袖、さらには一国のリーダーとしての“腕力”が問われている岸田氏は周囲に「相当引き締めないといけない」と語る。

 石破氏は顧問を務める石破派のパーティーで、政治家には「公平無私」の心構えが必須だと説いた。「『あいつ、自分のことを考えていないよね』と思ってもらえることが大事だ。国民に正面から語れば、日本人の英知は(課題を)乗り越える」と語った。一方、自身の総裁選への態度には触れなかった。

 昨年10月に派閥会長を退いて以降、石破派に明るい話題は乏しい。山本有二元農林水産相、伊藤達也元金融担当相ら側近は派閥を休退会した。

 衆院選後はさらに派閥が縮小しかねない。後藤田正純衆院議員が支部長を務める徳島1区には福山守衆院議員(比例四国)も出馬を模索しており、同じ派閥の2人がともに当選する保証はない。党の規定により、比例での重複立候補が難しいメンバーもいる。

 石破氏はメディア露出の機会が減った。先の都議選では精力的に党公認候補の応援に駆け付けたが、集客力の陰りは否めなかった。派内には次の総裁選で石破氏への支援を明言できないと漏らす議員もいる。こうした状況を踏まえてか、石破派関係者は「石破派のパーティーは今回が最後かもしれない」と漏らした。(永原慎吾、奥原慎平)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus