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宣言再発令「苦渋の決断」 専門家、想定より早く

 政府が8日に決めた新型コロナウイルス特別措置法に基づく東京都への4度目の緊急事態宣言。前回の宣言解除からわずか3週間での再発令となることに、これを了承した専門家からは「苦渋の決断だった」との声が漏れる。現在適用している蔓延(まんえん)防止等重点措置の効果が薄い中、手をこまねいているわけにもいかず、飲食店などから反発を招くことを承知の上での判断だった。

 基本的対処方針分科会の尾身茂会長が、宣言再発令は避けられないと感じたのは1週間以上前の6月下旬のことだった。3回目の宣言は6月20日をもって解除されたが、同日以降、新規感染者数が前の週を上回る日が続き、尾身氏は「勢いが止まらない」と危機感を抱いた。

 そもそも、3回目の宣言を解除したのは、新規感染者数を下げ切ることができたからではない。4月25日の宣言適用から約2カ月が経過し、効き目が薄れたため、いったんリセットしたのが実態だ。

 このときの宣言解除を了承した6月17日の基本的対処方針分科会の議事録によると、国立感染症研究所の鈴木基(もとい)・感染症疫学センター長は「解除すれば7月末から8月に東京で再度の宣言が出る可能性がある」と発言している。専門家にとって、今回の再発令は織り込み済みだったといえる。

 ただ、再発令の時期は想定より早かったようだ。原因はインドに由来する感染力が強いデルタ株への置き換わりが進んでいることが大きい。東京では感染者の4割近くがデルタ株と推計され、8月末にはほぼ置き換わるとの予測もある。

 7月8日の分科会終了後、日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は東京への宣言再発令について「苦渋の決断だ。苦痛を強いられる国民が多くいることをしっかり踏まえて、国はできるだけの対応をしてほしい」と強調。別の分科会メンバーはこう語った。

 「夏休みもお盆も五輪もまだ来ていないんだよ。来たらどうなるか分かるじゃない。先を見ないと。五輪開催中に医療逼迫(ひっぱく)なんていったら目も当てられない」

(坂井広志)

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