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内閣府、結論ありきの大甘試算 PB黒字化時期前倒し

 内閣府は21日示した中長期財政試算で、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の改善ペースを前倒しし、従来よりも2年早い令和9年度の黒字化を見込んだ。新型コロナウイルス禍でも堅持する令和7年度の黒字化目標達成が視野に入る内容で、“結論ありき”の印象が色濃い。バブル期並みの高い経済成長率を前提にした試算の実現性にはかねて疑問符が付いている上、秋の衆院解散・総選挙を控えた与党から大規模な補正予算を求める圧力も強く、目標が風前のともしびであることに変わりはない。

 PB黒字化の達成時期は昨年7月、それまでの試算から2年遅い11年度に修正されていた。2年度はコロナ対策に伴う大規模な補正予算の編成が相次いだほか、景気悪化に伴って税収が大きく減ると見込んでいたためだ。

 だが今回は2年度税収が想定より上振れしたことを理由に、黒字化時期を2年前倒しして9年度とした。2年度に講じた総額73兆円の補正予算で生じたPB悪化は、今後の景気刺激効果の発現やそれに伴う税収増によるPB改善につながるとみて、コロナ禍の影響は事実上残らないと結論付けたことになる。

 だが、補正予算は3割弱に当たる20兆円程度を使い残している。営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金支払いが遅れるなど必要なところに支援の手が届いておらず、当初想定した経済効果は出ていない。

 また、目標達成が可能なのは前提の成長率が中長期的に実質2%程度、名目3%程度を上回る「成長実現ケース」だけ。直近の約30年で一度も実現できていない机上の空論だ。実質、名目とも0~1%台半ばという巡航速度の成長率では7年度に7・9兆円、12年度でも6兆円のPB赤字が残り、黒字化は見込めない。

 秋の衆院選が間近に迫る中、自民党から既に30兆円規模の補正を求める声が上がり、財政赤字のさらなる拡大は不可避だ。それでも政府が黒字化目標にこだわるのは「財政健全化のポーズをとることで債務残高が雪だるま式に増えないようにする狙い」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)と指摘され、“絵に描いた餅”となった中長期試算は既に市場関係者からも見放されている。(永田岳彦)

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