海外情勢

イラン 反米ライシ師が大統領就任

 【カイロ=佐藤貴生】6月のイラン大統領選で当選した反米の保守強硬派、イブラヒム・ライシ前司法府代表(60)は3日、最高指導者ハメネイ師の認証を受け大統領に就任した。ライシ師は認証式での演説で「非道な経済制裁の解除に向けて行動する」と述べ、米国への対抗姿勢を強調した。国際協調を掲げた穏健派のロウハニ政権に代わり核問題などで強硬姿勢に転じる見通しで、米欧との関係が冷え込みそうだ。

 イランのメディアによると、ライシ師の後ろ盾で反米保守に軸足を置くハメネイ師は認証式の演説で「政権交代は希望を作り出す」と述べ、ライシ師の大統領就任を評価した。同師は5日に国会で就任宣誓し、今月中旬にも新内閣が発足する見通し。反米保守政権の発足は8年ぶりで、ライシ師は1979年のイラン革命以来、8人目の大統領となる。

 ロウハニ政権は2015年、制裁解除の見返りに核開発を自制する核合意を欧米など6カ国と結んだが、トランプ前米政権が18年に合意を離脱して経済制裁を再開。イランも合意に逸脱する行為を重ね、核合意は崩壊寸前の事態にある。ロウハニ政権は4月以降、合意立て直しのため、バイデン米政権と間接協議を行ってきたが、膠着(こうちゃく)状態が続き、次回日程も未定だ。

 ライシ師は米国との間接協議を引き継ぐ方針だ。ただ、大統領選直後には「イランの国益を保証する」ことが目的だとし、米国が科したすべての制裁の解除を要求。バイデン政権が目指すミサイル開発などに制限を拡大する交渉には応じないと強調するなど、米国との隔たりは大きい。

 イランは今年、核兵器級に一気に近づく濃縮度60%のウランを製造するなど、核開発技術は合意締結時から格段の進歩を遂げた。保守強硬派のライシ政権は協議を有利に進めるため、一段の核開発を進めて国際社会の不安をあおり、米国に対する圧力を強化する可能性もある。

 半面、米国の制裁が長期化すれば、低迷中の経済のさらなる悪化につながり、国民の不満の矛先が体制に向かう懸念は拭えない。イラン南西部では7月中旬、水不足に抗議するデモが起きたばかりで、治安当局が実弾を発砲して鎮圧したとも伝えられる。

 ライシ師は3日の演説で、外圧に左右されない経済発展を目指すと述べたが、その実現に向けた有効な手立ては見当たらないのが実情だ。

 イランと敵対するイスラエルとの緊張も高まりそうだ。7月29日にはオマーン沖でイスラエル系企業のタンカーが攻撃を受けて英国人ら2人が死亡する事件があり、イスラエルや米英はイランが関与したとして非難を強めている。

 ライシ師は大統領選で約62%を得票して圧勝したが政治経験やカリスマ性に乏しく、投票率は革命後の大統領選としては初めて50%を割り込んだ。支持基盤は盤石とはいえず、国内外に難題を抱えながらの船出となる。

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