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人口動態調査、コロナで東京一極集中に変化の兆し

 新型コロナウイルス禍で東京一極集中に変化の兆しが生まれている。総務省が4日発表した令和3年1月1日時点の人口動態調査では、東京都の人口(外国人含む)増加率が伸び悩む中で神奈川県が増加数ではトップに躍り出るなど東京から首都圏近郊へ人の動きがあったようだ。ただ、脱一極集中の切り札であるテレワークは期待されたほど普及せず、感染収束後に流れが戻る可能性もある。

 人口が増えたのは東京、神奈川、千葉、埼玉、沖縄の5都県。前年は増加した愛知県と大阪府、滋賀県は減少に転じ、三大都市圏(東京、名古屋、関西)の合計も外国人を含む人口の調査を始めた平成25年以降で初めて前年を割り込んだ。

 コロナ禍でも求心力を保った首都圏だが、中身は微妙に変化した。東京都は前年比0・06%増(8600人増)とプラス圏は維持したが、増加率は前年(0・69%増)を大きく下回り25年以降で最低水準だ。感染防止のため人々が密集しやすい都市部を避ける動きが広がったほか、テレワークによる職住融合の流れで都心に住むメリット自体が薄れ、居住地を郊外に移す動きが起きたとみられる。

 対して神奈川は、0・12%増(1万803人増)と伸び率こそ前年(0・22%増)を下回ったとはいえ、増加数で都道府県トップを初めて東京都から奪った。コロナ禍の移住希望先で注目された長野県軽井沢町も、人口の流入など出生・死亡要因を除く増加数で町村部の1位を獲得した。

 ただ、脱都市部の牽引役になったテレワークは思ったほど広がらない。日本生産性本部の調査では1回目の緊急事態宣言が発令されていた昨年5月の実施率は3割を超えたが、今年7月は20・4%にとどまっている。コロナ禍の長期化で自粛疲れが蓄積し、テレワークからオフィスへの回帰が進んでいるとの指摘もある。

 東京一極集中は主に10~30代の若年層が地方から東京都へ流入することで起きており、地方の少子化が加速している。政府はコロナ禍を契機に歯止めをかけたい構えだが、テレワーク頼りではその機運も早々に薄れかねず、地方での雇用創出を含めた息の長い対策につなげる必要がある。(田辺裕晶)

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