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政府がコロナ指標を見直しへ…新規陽性者数より重症者数 緊急事態発令基準も

 政府は新型コロナウイルスの感染状況を評価する指標を見直す。ワクチン接種の進展などを踏まえ、新規陽性者数よりも重症者数や医療提供体制を重視する方向で、緊急事態宣言などの発令基準も改める。コロナ対策分科会の専門家が検討を進めており、宣言の期限である9月12日までに結論を得たい考えだ。制限緩和の方向性も含めた「出口戦略」の提示を急ぐ。

 現在の指標と基準は昨年8月に分科会が示し、今年4月に「入院率」の指標を加えるなどの見直しを行った。医療の逼迫(ひっぱく)具合(病床使用率など)▽療養者数▽PCR陽性率▽新規陽性者数▽感染経路不明割合-の5指標をもとに、4段階の「ステージ」で感染状況を評価しており、ステージ4が緊急事態宣言、3が「蔓延(まんえん)防止等重点措置」の目安となっている。

 今回、さらに基準を見直すのは、ワクチン接種の進展や軽症・中等症患者向けの治療薬の登場で重症化する人の割合が減り、実態にそぐわなくなってきたためだ。厚生労働省幹部は今月19日、「必要な人に医療を提供できる体制ができているかが重要な要素だ。新規陽性者数の指標は必要だが、ウエートは下がる」との見通しを語った。

 菅義偉(すが・よしひで)首相は17日の記者会見で「緊急事態宣言の出口に向かって、医療提供体制の負荷に着目し、病床使用率やワクチン接種の状況、重症者数などを分析したうえで対応していく」と説明。同じ会見で分科会の尾身茂会長は「今までの指標に加え、自宅療養者や宿泊療養者、入院調整中の人がどれだけいるかの指標も非常に重要だ」と語り、感染と相関関係のある人流に着目する必要性も挙げた。

 現行基準のままでは、東京都がステージ4を脱するには1日当たり感染者数が500人以下となる必要がある。「今のままではいつまでも宣言を解除できない」(閣僚)という事情もあり、政府は早期に結論を得たい考えだ。ただ、感染がなお拡大局面にある中で適切な解除水準を見極めるのは容易ではなさそうだ。「ゴールポストを動かした」と国民の反発を招く恐れもある。

 政府は併せて、社会経済活動の正常化に向けた制限緩和の道筋を示す必要にも迫られている。これも専門家が検討を進めており、8月中旬までにまとまる予定だったが、感染の急拡大と宣言の期限延長で日程感が不透明になっている。(千葉倫之)

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