【シンガポール=森浩】東南アジア諸国連合(ASEAN)では相次ぐバイデン米政権高官の東南アジア訪問を好意的に捉える声が上がる。東南アジアでは中国が経済支援をテコに浸透を図っており、ASEAN加盟国には対中警戒感も根強い。バイデン政権の関与拡大は基本的に歓迎だが、訪問国の偏りには不満も漏れる。
ASEAN加盟国にはトランプ前米大統領がASEANの重要外交行事である東アジアサミット(EAS)を欠席し続けたことなどで対米不信感が広がった。バイデン政権発足後、東南アジア重視の“本気度”を見極めていただけに、シンガポールメディアCNAは「最近の動きは重要だ」と歓迎した。
加盟国には米中どちらに付くかという選択は避けたい意向が働く。ただ、中国の南シナ海の実効支配強化は看過できず、ベトナムなど南シナ海沿岸国で中国不信感は強い。
シンガポールのシンクタンクが加盟国の有識者を対象にした調査(2月発表)によると、「東南アジアで政治的・戦略的影響力が強い国」を問う質問では中国が49%でトップ。だが、9割近くがその影響力を「憂慮している」と答えた。
一方、ハリス氏がオースティン米国防長官に続き、「地域の盟主」を自任するインドネシアを訪問先から外したことについて、同国紙ジャカルタ・ポストは「バイデン政権のアジアへの取り組みは、地域への理解が足りないと思わざるを得ない」と苦言を呈している。