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接種証明、国内利用へデジタル化 利便性向上で脱パスポート

 政府が視野に入れる新型コロナウイルス禍に伴う行動制限の緩和では、公的なワクチン接種証明書のデジタル化がカギだ。政府は接種を国内で証明できるようにするため、すでに導入済みの海外渡航用の接種証明書の活用を想定。デジタル化を進めることで利便性を高めれば、より多様な場面で利用できるようになると期待している。ただし接種証明書を検査での陰性証明と結び付けるといった、より積極的な活用には時間がかかるもようで、さらなる基盤整備が急務だ。

 政府が見据える行動制限緩和は2回のワクチン接種や検査の陰性証明が活用される。実施には接種を終えていることや陰性を証明する公的な制度が不可欠だ。

 このうち接種済みであることを示す接種証明書は海外渡航用の「ワクチンパスポート」として7月下旬に導入済み。利用目的は入国時に外国政府に対して接種の有無を証明することで、今月3日現在で32の国と地域で使える。ただ、国内利用の規定はないうえ、紙でしか発行されていないため、持ち運びに不便だという課題がある。発行件数は公表されていない。

 そこで政府が検討するのが接種証明書の利便性向上のためのデジタル化と、国内利用の拡大だ。デジタル化が実現すると、申請手続きはオンラインのみで可能となり、証明書の発行はスマートフォンへのデータ送信に置き換えられる。利用者は手続きで役所などに出向く必要がなくなり、持ち運びも簡単になる。

 加藤勝信官房長官は2日の記者会見で、飲食店や旅行、イベントなどでの利用を念頭に、「デジタル化できればワクチン接種証明書を国内でも活用できる」と期待を示していた。

 内閣官房によると、スマホへ送られるのは、接種情報と偽造防止のためのQRコード。店舗などがQRコードを専用アプリで読み取ると、接種情報が偽造ではないことを証明する発行者の電子署名が表示される仕組みになるという。スマホがない人向けに、紙の証明書発行も続けられる。

 ただし証明書をめぐる課題は残る。現在の証明書は海外渡航用のため、発行にはパスポートが必要。海外に行くつもりがなく、パスポートを持っていない人は申請できない。国内用のデジタル証明書の新設などの対応策は「検討中」(内閣官房の担当者)という。

 また検査での陰性結果を証明する制度の構築もこれからだ。海外では陰性証明データを接種証明と同様にスマホに記録する仕組みもあるが、内閣官房の担当者は「陰性証明との連携は必要と思っているが今後の検討となる」と説明する。

 さらに実際の導入にも難しさはある。デジタル証明書に詳しい慶応大医学部の藤田卓(たか)仙(のり)特任准教授はデジタル化の動きを歓迎する一方、証明書に利用されるアプリが旅行や飲食といった業界ごとに乱立する可能性を指摘。利用者の混乱を避けるため、「国がイニシアチブを取る必要がある」としている。(福田涼太郎)

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