海外情勢

「勧善懲悪省」復活 タリバン暫定政権、女性迫害など人権弾圧も

 【シンガポール=森浩】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンによる暫定政権が8日樹立され、タリバンの国内支配が本格的に始まった。人事をめぐる主導権争いが続いたが、中立的なアフンド師をトップに据える形で収めた。ただ、治安を担当する内相代行に最強硬派領袖(りょうしゅう)が就くほか、女性迫害などを繰り広げた「勧善懲悪省」復活など懸念材料は多い。イスラム法の極端な解釈による支配が再来しそうだ。

 地元報道などを総合すると、タリバン内部では当初、穏健派とされる政治部門トップのバラダル師が首相職に就任する計画が浮上した。だが、国際社会との対話にも重きを置くバラダル師が新政権を主導することに対し、一部強硬派が反発していた。

 首相代行に就くアフンド師は古参幹部だが、宗教家の側面が強い。穏健派と強硬派の対立を収めるため、「妥協」(ロイター通信)として摩擦の当事者でない人物をトップに据えたとみられる。調整にはタリバンに影響力を持つとされるパキスタン軍「統合情報部」(ISI)が関与したとの情報もある。

 タリバンは暫定政権樹立で8月15日の首都カブール制圧以来続く「政治の空白」の解消を目指すが、内外の懸念は尽きない。最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」リーダー、シラジュディン・ハッカニ師の内相代行就任は既に議論を呼んでいる。同派は外国人を標的としたテロを繰り返し、国際テロ組織アルカーイダとも親密とされる。タリバンは「アフガンをテロの温床としない」と約束しているが、テロリストが活性化する危険性すらある。

 また、最高指導者のアクンザダ師が「イスラム法に基づく統治」を改めて主張した上で、勧善懲悪省が復活することで、恐怖政治再来の懸念がいっそう強まった。7日には首都カブールでパキスタンに抗議するデモが行われたが、戦闘員が参加者複数人を連れ去るなど、異論を排除する動きが出ている。

 タリバンは暫定政権の政策をめぐって欧米が態度を硬化させても、中国などの支援で乗り切る構えだ。既に中露やパキスタンを暫定政権樹立の記念式典に招待したとの報道もある。タリバン報道官は6日の記者会見で「中国の協力は非常に重要だ」と名指しし、支援に期待する考えを示した。

 暫定政権の第2副首相代理に就任するハナフィー師は、対外窓口であるカタールの政治事務所で中国との交渉を担当していた。暫定政権でも引き続き交渉役を担う可能性がある。

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