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自民党総裁選 エネルギー政策も焦点、核燃料サイクルの将来は

 17日告示された自民党総裁選には4人が立候補し、29日の投開票に向け論戦が始まった。新型コロナウイルス禍への対応など争点はさまざまだが、菅義偉政権が打ち出した「脱炭素社会」の実現を目指すエネルギー政策は4候補の主張に幅があり焦点の1つになり得る。改訂作業中のエネルギー基本計画(エネ基)のあり方も含め活発な議論が望まれる。

 早く手じまいを

 「なるべく早く手じまいすべきだ」

 4候補のうち、河野太郎行政改革担当相は11日、使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」について、記者団にこう持論を強調した。河野氏は10日の出馬会見では原発について「当面は再稼働する」と発言していた。

 ある電力関係者は「核燃料サイクルは原発安定稼働の急所。これを認めない再稼働容認は単なるポーズに過ぎない」と警戒する。

 「急所」とはどういうことか。

 核燃料サイクルは、使用済み核燃料を青森県六ケ所村に搬入する論拠になっている。これが破綻すれば影響は甚大だ。

 六ケ所村はもちろん、九州電力が原発を稼働させる佐賀県玄海町や鹿児島県薩摩川内市など立地自治体は使用済み核燃料をあくまで再処理の原材料として位置付けている。核燃料サイクルがなくなれば単なる廃棄物となり、地元の理解は得られない。

 六ケ所村に搬入された使用済み核燃料も、それぞれの原発に戻さざるを得なくなるが、各原発の貯蔵能力には限界がある。それらを踏まえ、岸田文雄前政調会長は「現実に動いている原発すら動かすことが難しくなる」と述べ、核燃料サイクル維持の重要性を強調している。

 現在は、再処理によって高レベル核廃棄物の体積を減らし、地下深くに処分する「地層処分」を行う構想だが、核燃料サイクルが否定されると使用済み核燃料そのものを何らかの形で直接処分する必要が生じる。

 令和2年11月、北海道寿都町と神恵内村で地層処分に関して文献調査する計画が認可された。文献調査の実施は平成12年に手続きを定めた最終処分法が制定されてから初となる。

 ただ、19年に高知県東洋町が応募した後に撤回し、今回も北海道が文献調査の先のプロセスへの移行には反対姿勢を見せるなど、道のりは険しい。

 電力関係者は「地層処分ですら大きな摩擦がある。ましてや、直接処分を受け入れる自治体など存在するのか」と指摘する。

 日米原子力協定

 加えて、核燃料サイクルの放棄は、外交問題にも発展し得る。それは、原発の運転や再処理によって生じる核兵器の原料、プルトニウムをめぐるものだ。

 日本の保有量は平成27年末、約48トンにまで膨らんだ。韓国国防省は、核開発を進める北朝鮮のプルトニウム保有量を約50キロ(2016年国防白書)と推定するが、その1千倍近い膨大な量だ。

 核燃料サイクルでは、プルトニウムとウランを混ぜた酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマルによって消費することを目指すが、計画は遅々として進まない。プルトニウムの積み上がりに、「アジアでの核拡散を招きかねない」(エドワード・マーキー米上院議員)など不信の声が上がりつつある。

 日本は原子力の平和利用で、非核兵器保有国としては唯一、再処理などが認められる特権的地位にある。その最大の根拠は日米原子力協定だ。ただ、平成30年に自動延長された協定は日米いずれかの通告があれば6カ月後に終了できる。

 プルトニウム問題を契機に、協定が失効するような事態を招けば「具体的にどうなるかは見通せないが、国内の原発の運転に何らかの影響があることは間違いない」(業界関係者)という。

 拙速の「前科」

 一貫して核燃料サイクルの抜本的な見直しを唱える河野氏は、その根拠として高速増殖炉「もんじゅ」計画の頓挫や、プルトニウムの安定的な消費が見込めないことなどを挙げる。

 確かに、それぞれ一定の説得力を持つ。しかし歴史的経緯や、そこで関係者が積み重ねた議論を飛び越えて結論を得ようとすれば混乱を招きかねない。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で「最低でも県外、目指すは国外」をスローガンに掲げた民主党政権下での迷走は、その象徴と言える。

 河野氏は核燃料サイクルの「手じまい」について、地元への説明などを含め拙速に進めない考えを示す。しかし自民党関係者は河野氏が安倍晋三政権で防衛相を務めていた令和2年、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止をめぐり、党への根回しを欠き、批判を呼んだことを念頭に「河野氏には“前科”がある」と声をひそめる。

 大手電力各社による地域独占と総括原価方式に支えられた電気事業は、自由化によって過去のものとなった。国策民営で進められていた原子力発電のあり方についても、見直しが必要なことは論をまたない。その意味で、河野氏の提言には意味がある。

 しかし日本国民を塗炭の苦しみに追い込んだ先の大戦に至った原因の1つに、資源やエネルギーの問題があったように、道を誤れば国益を損ないかねない。

 高市早苗前総務相も原子力の平和利用は必要だと位置づけ、新技術の開発強化を打ち出す。告示直前の立候補表明となった野田聖子幹事長代行も含め、立候補した4氏には、国家百年の計であるエネルギー政策について骨太の議論を戦わせ、国政を担うに足る責任ある将来像を示すことが求められている。(中村雅和)

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