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脱炭素への投融資「環境ファイナンス」 日本に求められる巻き返し (2/2ページ)

 金融機関は投融資先の温室効果ガス排出量削減を後押しする取り組みにも積極的だ。三井住友フィナンシャルグループは関連会社が製造業の工場などの屋根に年間電気使用量の一部をまかなう太陽光発電設備を設置し、保守やメンテナンスも担う事業を行う。

 ただ、国際的な比較では日本の金融面での取り組みには出遅れ感がある。世界持続可能投資連合(GSIA)が今年7月に発表した報告によると、環境対策や社会課題への貢献を重視するESG投資の国・地域別の残高は、米国が17兆810億ドル(約1870兆円)、欧州が12兆170億ドル。これに対して日本は2兆8740億ドルだ。

 さらに日本では再生エネをめぐる制約の強さも否めない。日本は平地が少ないことなどから発電設備設置の適地が限られる上、発電設備設置に伴う周辺環境への影響を懸念して地元が反対するケースもある。ある業界関係者は再生エネでつくられた電力への需要が高くなっていけば、「企業の間で再生エネ電力を奪い合うような展開になっていく可能性もある」とみる。

 大和総研の田中氏は環境問題対応を前進させるためには、「気候変動問題への取り組みをビジネス化することが重要だ」と指摘。企業や自治体が環境分野での取り組みのために発行する債券「グリーンボンド」などの発行基準を明確にして、適切な事業に資金が流れていくようにすることが必要だとしている。

 課題克服へ産業構造転換も

 2050年の脱炭素に向けて、政府は30年度の温室効果ガス排出量削減目標を従来の13年度比26%減から46%減に引き上げている。目標実現のため、次期エネルギー基本計画の政府案では30年度の電源に占める再生可能エネルギーの割合を従来目標の22~24%から、36~38%まで大幅に拡大させるとする。

 ただ、再生エネには天候によって発電量が左右されたり、周辺の自然環境への影響や費用が大きくなったりといった課題も多い。大量に導入するには技術革新などが不可欠で、産業構造の転換まで見据えた官民が一体となった取り組みが求められる。(高久清史)

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