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次期政権が「ポスト黒田」を指名 自民総裁選、金融政策にも影響

 論戦が熱を帯びる自民党総裁選は日本銀行の金融政策にも影響を及ぼしそうだ。総裁選後に誕生する次期政権は事実上、令和5年4月に任期満了となる黒田東(はる)彦(ひこ)日銀総裁の後任の指名権を持つ。候補者の間では黒田日銀が「異次元の金融緩和」で目指す2%の物価上昇に関する温度差があり、ポスト黒田の人選は金融政策の転換につながる可能性がある。

 4人の候補者のうち2%目標への疑問を示唆するのは河野太郎ワクチン担当相だ。河野氏は10日、目標達成について「かなり厳しいものがあるのではないか」と言及した。金融政策は「日銀にある程度お任せしなければいけない」としているが、黒田氏の後任に2%目標にこだわらない人物を選ぶ可能性がある。

 また野田聖子幹事長代行は出馬表明直前までホームページで「現在の異次元の金融緩和は長期的に行う前提ではなかったはず」と指摘。2%目標から距離をとる姿勢を感じさせていた。

 一方、岸田文雄前政調会長は「大胆な金融政策は維持する。2%の目標は世界水準なので掲げ続ける」と強調。高市早苗前総務相は「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資を総動員して2%の達成を目指す」としている。

 2%目標は平成25年1月、物価が持続的に下落するデフレからの脱却を掲げる当時の安倍晋三政権と日銀の共同声明に盛り込まれ、「金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」と明記された。黒田氏は就任翌月の同年4月、早期実現に向けて大量の国債を買い入れる異次元の金融緩和を導入。当時は「2年で達成する」とした。

 しかし8年余りたっても実現は遠い状況だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは新首相の方針次第で「金融政策に柔軟性を与えるために2%の物価上昇を『早期実現』ではなく、長期的な目標にするような共同声明の見直しがあり得る」とし、政策転換を視野に入れた黒田氏の後継選びの可能性も指摘する。

 新型コロナウイルス禍からの回復が遅れ、消費の持ち直しが鈍い状況では、誰が首相になっても金融緩和策を継続するとの見方が多い。21、22日に開かれる日銀の金融政策決定会合でも金融緩和策の変更はない見通しだ。

 ただ、異次元の金融緩和がもたらす低金利の長期化には金融機関の収益悪化といった副作用も大きい。総裁選候補の発言やポスト黒田として浮上してくる顔ぶれは、金融政策の転換の行方を探る手がかりになりそうだ。(高久清史)

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