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公明、自民総裁選を不安視 年金改革・比例枠減に注視

 自民党総裁選(29日投開票)をめぐる論戦が公明党の不安を駆り立てている。4候補が掲げる政策には公明の立場とは相いれない内容も目立つためだ。自公両党は新総裁の下で政権合意を交わす方向だが、順風満帆の船出とはいかない可能性もある。

 「総裁選の論戦に影響を与えるのは避けたい」

 公明の石井啓一幹事長は24日の記者会見で、総裁選に関する質問に踏み込んだ答えを避けた。山口那津男代表ら他の幹部も一様に総裁選への言及を避ける。党関係者は「誰が勝つか見通せない中で、軽率な発言はできない」と語る。

 ただ、内心には焦りを抱えている。ある幹部は、河野太郎ワクチン担当相が提起する年金制度改革を念頭に「基礎年金の全額税負担が新政権の一丁目一番地などといわれたら困る。消費税は一体いくらになるんだ」と漏らす。

 民主党政権下では、河野氏の主張に近い1人当たり月額7万円の最低保障年金制度の導入が検討されたが、財源となる消費税率を大幅に引き上げる必要があることから、公明は自民とともに反対した経緯がある。公明は国民生活を直撃する消費増税の議論には抑制的で、具体的な制度や数字を示さない河野氏の姿勢に「不安をあおるだけ」と反発の声があがる。

 河野氏が掲げる選挙制度改革にも否定的だ。河野氏は衆院選で比例代表枠の削減を主張するが、公明の衆院議員29人のうち比例選出は21人を占める。実現すれば党の基盤が揺らぎかねず、党関係者は「選挙区と比例を棲み分けてきた自公の選挙協力を理解していないのではないか」と不信を募らせる。

 河野氏以外の候補にも不安要素はある。岸田文雄前政調会長や高市早苗前総務相は、敵基地攻撃能力の保有検討に前向きな姿勢を示す。相手領域内でミサイルを阻止するための打撃力を意味するが、自衛隊の能力増強に対する公明のアレルギーは強い。

 竹内譲政調会長は記者会見で「一歩間違えれば日本が先制攻撃したと取られかねない」と指摘。党内には憲法の範囲内での議論開始に理解を示す議員もいるが、衆院選を控えたタイミングでは容認できないのが実情だ。

 ある党幹部は「保守色の濃い高市氏は理解できるが、現実路線の岸田氏があそこまではっきり口にするとは思わなかった。総裁選に勝つため高めのボールを投げているのだろうが…」と困惑の表情を浮かべる。(石鍋圭)

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