【ベルリン=三井美奈】ドイツ総選挙で「次の首相」の有力候補となった2人は共に、メルケル長期政権を支えた「功労者」だ。国内経済を支える有力自治体の首長を務め、対中貿易を重視してきた点でも共通する。
キリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首は、独西部ノルトライン・ウェストファーレン州の州首相。連邦下院議員、欧州議員を経て2005年以降、州政界に専念した。17年の州選挙でCDUを率い、7年ぶりに社会民主党(SPD)から州首相の座を奪回した。出身は同州アーヘン。敬虔(けいけん)なカトリック教徒で15年の難民危機では、メルケル首相の寛容な受け入れ策を支持した。
同州は、国内総生産(GDP)の5分の1を担う有力州。州内のデュイスブルク港は世界最大の内陸コンテナ港で、中国の経済圏構想「一帯一路」の欧州側拠点として急成長した。
一方、SPDのショルツ党首は、メルケル大連立政権で18年に財務相に就任。新型コロナウイルスが流行した昨年夏、総額1300億ユーロ(約16兆円)の経済支援策をまとめ、欧州連合(EU)による復興基金の実現にも尽力した。西部の工業都市オスナブリュック出身。弁護士から政界へ転身し、11年から7年間、ハンブルク市長を務めた。ハンブルク港は国内一の貿易港で、中国は最大の取引先だった。
今回の選挙戦では、主要各党が、公約で中国政策に言及した。CDU・CSUは、中国を「競争相手であり、協力相手でもある」と明記。対中貿易を重視する一方、知的財産の保護でEUによる対策を主張した。SPDは、台湾に対する圧力の高まりに懸念を示し、欧州と中国による対話の必要性を明記した。