真山仁の穿った眼

原油価格高騰で騒ぐ人に問いたい 「脱炭素社会」を迎える覚悟はあるのかと (2/2ページ)

真山仁
真山仁

試される覚悟

 200年近く、世界は化石燃料によって繁栄し、社会を形成してきた。現代社会は、化石燃料の恩恵を前提に成立していると言っても過言ではない。それをやめる以上、今の社会や生活を捨てる覚悟が必要なのだ。

 化石燃料社会にどっぷり浸かったわれわれが、脱炭素社会へ緩やかに移行するなどと掲げるのは、片腹が痛い。そんな生やさしいものでは実現不可能だ。

 例えば、ガソリン車の走行を禁止し、電気自動車だけにする。莫大な費用はかかるが、一時的に自動車産業は大成長を遂げる、と考えられているのかも知れない。しかし、電気自動車の製産工程でも、二酸化炭素を出してはならないのだ。

 これがかなりの難題なのは、誰でも分かる。だとすれば、本当に脱炭素社会を目指すのなら、自動車を捨てる必要があるかも知れない。

 それを考えれば、ガソリン代が1リットル当たり10円や20円上がるのを騒いでもらっては困る。電気代だって、今の数倍、数十倍の価格になり得る。逆に、それくらいじゃないと、脱炭素なんて夢物語だ。

 現在のエネルギー資源価格の高騰は、われわれがどこまで本気で、脱炭素社会を迎える覚悟があるのかを試す良い機会となる。

 いや、本音を言えば、この程度の値上がりを高騰などと言わないでほしいし、これから来るであろう脱炭素社会に向けた取り組みの序章にすらならない。

 だから、この程度の高騰で騒ぐ人に問いたいのだ。

 電気代が今の数倍、数十倍になっても、あなたは「豊かな暮らし」を続ける自信はあるのか、と。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』、「震災三部作」の完結編となる『それでも、陽は昇る』など骨太の社会派小説を数多く発表している。初の本格的ノンフィクション『ロッキード』を上梓。近著に、東南アジアの軍事政権下の国で「民主主義は、人を幸せにできるか」を問う長編小説『プリンス』がある。最新作は政治経済・教育・メディア・若者など、現場に足を運びさまざまな視点から日本社会の現在地を描く『タイムズ』。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちらから。真山仁さんのオウンドメディア「真山メディア-EAGLE's ANGLE, BEE's ANGLE-」も随時更新中です。

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