海外情勢

バイデン氏、ASEANに1億ドル支援表明

 【ワシントン=大内清】バイデン米大統領は26日、米首脳として4年ぶりに米・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に臨み、「東南アジア重視」の姿勢を鮮明にした。新型コロナウイルス対策や気候変動問題などで総額約1億ドル(約113億円)の支援を表明。オンライン形式との制約はあるものの、中国による覇権的な海洋進出や域内での影響力拡大を念頭に、こうした協力をテコにして「ASEANとの戦略的関係の強化」(ホワイトハウス)を図る考えだ。

 会議でバイデン氏は「米国とASEANの関係は、未来と自由で開かれたインド太平洋のために決定的に重要だ」と語った。

 米・ASEAN首脳会議をめぐっては、トランプ前大統領が就任初年の2017年に参加した後は3年連続で欠席し、米国が東南アジア関与を後退させているとの印象を与えた。

 これに対し、バイデン氏はASEANを重視する姿勢を強調。8月にハリス副大統領をベトナムとシンガポールに派遣するなど、バイデン政権の掲げる「ルールに基づく国際秩序」の維持に向けた東南アジア諸国との連携強化を進めてきた。今回の首脳会議出席は、それをさらに前進させるものだ。

 背景には、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「クアッド」の強化や、米英豪3カ国の「AUKUS(オーカス)」創設で「自由で開かれたインド太平洋」に向けた多国間の枠組みが重層化する中、東南アジア諸国の重要性が増しているとの事情がある。

 「人権外交」を掲げる米国には、クーデターで国軍が実権を握ったミャンマー情勢も懸念材料だ。中国やロシアが国軍と関係を深めて影響力を強め、米国とASEAN各国との離間を図る恐れも指摘される。

 バイデン氏は27日、トランプ氏が4年連続で欠席した東アジアサミットにもオンラインで参加。ミャンマーの民政復帰を促すASEANの取り組みを後押しするものとみられるが、ASEANは内政不干渉と全会一致の原則を堅持しており、働きかけには限界があるとの見方が強い。

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