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首相、ASEAN重視強調 インド太平洋は対中「主戦場」

 岸田文雄首相は27日、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議にテレビ会議方式で参加し、安倍晋三内閣の外相時代に対ASEAN外交に力を入れてきたことを強調した。

 「私は外相として全ての加盟国を延べ19回訪問し、ASEANとの関係強化に取り組んできた」

 首相は衆院選の応援演説の合間を縫い、日ASEANだけでなくASEANプラス3、東アジアサミット(EAS)すべてに参加した。外務省関係者は「ここまでASEANを優先していただけるとは思わなかった」と驚く。

 首相がASEAN外交にこだわるのは、インド太平洋地域で影響力を拡大する中国に対抗する上で、ASEANが「主戦場」であることを熟知しているからだ。9月に行われた日米豪印4カ国(クアッド)の首脳会合では「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現するため、ASEANとの連携を強化することが確認された。

 首相は27日の会合で中国を名指しこそしなかったが「開放性、透明性、包摂性、法の支配といった本質的な原則を強化することに資する具体的な協力を着実に進めていく」とも述べた。いずれも中国に欠ける価値観を掲げることで、中国の影響力拡大に不安を抱くASEAN諸国を引き寄せたい意図がにじむ。

 ASEANをFOIP陣営に巻き込む上で積極的な役割を果たしているのが日本だ。昨年はASEAN版FOIP「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」に関し、域外国としては初めて共同宣言を発表した。今年は昨年の宣言に基づき、インフラ整備やサイバーセキュリティーなど計73件の協力が進んでいることを報告書に盛り込んだ。

 日本に追随する動きも出ている。ASEANは26日に韓国と発表した共同声明で、AOIPの推進を盛り込んだ。外交筋によると、インドも同様の共同宣言発表に向けて調整を進めているという。

 これに対し、中国は警戒感を隠さない。ASEANが一昨年6月にAOIPを発表した直後は静観していたが、昨年になって反対に転じた。今年のASEAN関連会合でまとめられる共同文書では「AOIP」に関する記述を全て削除するよう要求しているという。

 ただ、ASEANからすれば、中国の豊富な資金力を裏付けとしたインフラ整備や貿易は魅力的であり、圧倒的な軍事力を誇る中国を過度に刺激したくないのも事実だ。首相が選挙の合間に時間を作って会合に参加したのは、日本の首相がASEANを重視する姿勢を示さなければ、FOIPをめぐる状況が不利になりかねないという危機感も背景にある。(杉本康士)

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