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働く女性、児童生徒で増加 自殺対策白書

 政府は2日、令和3年版自殺対策白書を閣議決定した。白書では新型コロナウイルス感染が拡大した昨年の自殺状況を分析。過去5年間の平均と比較した結果、働く女性の自殺が375人増えて1698人となり、児童生徒でも140人増の499人になったことが判明した。女性の自殺原因では「勤務問題」が3割以上増加。児童生徒の自殺は一斉休校明けなどの学校再開時期に急増するなど関連性がうかがえた。長期に及ぶコロナ禍で深まる孤独や孤立などの社会問題が背景にあるとみられている。

 昨年の自殺者数は2万1081人(前年比912人増)で、男性は11年連続減の1万4055人となった一方、女性は前年比935人増の7026人と2年ぶりに増加した。

 過去5年平均比で女性の自殺を年代別でみると、20歳未満が120人増、20・30代261人増、40・50代134人増。働く女性では「自営業・家族従業者」は微減だったが、「被雇用者・勤め人」が381人と大きく増加した。「その他無職者」は98人減、「主婦」は70人減だった。

 遺書などから推定された女性の自殺原因・動機では「勤務問題」が34・8%増加。内訳は「職場の人間関係」が123人(39人増)、「職場環境の変化」が48人(24人増)だった。働く女性の自殺が増加した背景について、厚生労働省の担当者は「非正規で働く女性が多く、雇用の問題が要因の1つになった」との見方を示した。

 また、児童生徒の自殺者の推移は、社会の動きとの関連がうかがえた。昨年3月2日の一斉休校要請に合わせて週10人超から急減。だが、全国的に学校が再開されるようになった6月には一転して増加し、週15人を超えた。夏休み明けの9月中旬には週20人超となったほか、進路の検討が始まるとされる11月にも増加に転じた。

 児童生徒の心理的な変化などをみるため、インターネットでの自殺に関連する恐れがある文言の検索状況を分析したところ、「学校 行きたくない」という検索ワードが、「死にたい」「消えたい」などと比べ、自殺者数の推移と関連が高かったという。

 白書では、昨年下半期に明らかになった有名俳優2人の自殺の影響についても分析。自殺報道の前後2週間で自殺者数を比較したところ、男女ともに増加し、特に女性への影響が大きかったとした。

 厚労省は自殺対策として、「LINE(ライン)」などSNS(会員制交流サイト)を活用した相談事業を支援。昨年の相談件数は延べ約6万3千件に上ったという。白書は「社会全体のつながりが希薄化する中で、新型コロナの感染拡大により接触機会が減り、長期化することで女性や若者の自殺が増加するなど孤独・孤立の問題が一層顕在化している」と指摘した。

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