海外情勢

「輸出額は過去最高に好調」それでも韓国経済が一向に良くならない深刻な要因 (3/3ページ)

 ■景気の減速はさらに鮮明になる恐れ

 今後、韓国経済では内需が追加的に落ち込み、景気減速が鮮明化する可能性がある。

 まず、感染状況は懸念材料だ。10月最終週に入っても韓国の新規感染者数は十分に低下していない。その一方で、11月から韓国では段階的にソーシャルディスタンスが緩和される。感染者が減り、徐々に韓国国内で動線が修復されれば、飲食、宿泊などサービス業の業況が持ち直しに向かう可能性はある。韓国政府はそれを年4.0%の実質GDP成長率目標の達成につなげたいようだ。

 しかし、感染再拡大が落ち着かない中で人流が増えれば、感染者数が反発する恐れがある。その展開が現実のものとなれば、韓国の経済と社会にはかなりの負の影響があるだろう。中国や英国などでの感染再拡大の状況を見ていると、そのリスクは過小評価できない。仮に、11月以降に韓国の感染者数が再度増加し始めれば、動線は寸断され、サービス関連を中心に個人消費は一段と減少して内需が落ち込み、景気減速が鮮明化する可能性がある。

 ■中国経済の下振れリスクも悩みの種

 それに加えて、韓国では車載半導体の不足が深刻であり、現代自動車は2021年の販売計画を下方修正した。最先端のロジックを中心に演算処理に用いられる半導体は世界全体で需給が逼迫(ひっぱく)している。その状況は2022年の後半から2023年初めにかけて続く可能性がある。自動車生産の減少は、韓国の輸出にブレーキをかけ、国内の設備投資にもマイナスの影響を与えるだろう。

 それは韓国の雇用・所得環境の不安定化につながり、内需は圧迫される可能性がある。また、現代自動車では労働組合が工場での雇用の長期化を求めて、新規の採用が減少しているとの報道がある。労働組合による既得権益の維持と強化は、新しい雇用機会の創出を妨げる。それは、個人消費はもとより韓国経済の潜在成長率にマイナスだ。

 韓国経済は外需の下振れリスクにも直面している。不動産市況の悪化と電力不足の深刻化によって中国経済の減速懸念が高まっている。10~12月期、中国の実質GDP成長率は前年同期比で3.5%程度に一段と鈍化するとの見方もある。内需を中心に韓国経済の減速懸念は追加的に高まる恐れがある。 (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

 真壁 昭夫(まかべ・あきお)

 法政大学大学院 教授

 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

(PRESIDENT Online)

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