国内

コロナ、観光、防災…衆院選・地方からの論点 (1/3ページ)

 10月31日に投開票が行われた衆院選。特別国会で首相指名選挙が行われたのち、いよいよ政策の論議が本格化する。地方自治体にとって、「第6波」といわれる次なる新型コロナウイルス感染拡大を押さえ込む医療体制の整備が急務だ。インバウンド(訪日外国人客)が戻らない中で、観光政策が取り組んでおくべきことは何か。また毎年のように起きる大規模な自然災害への備えはどうあるべきか。コロナ対策と観光、防災-の3つの地方の課題について識者に論点を聞いた。

 コロナ6波へ「政府・自治体で協議の場を」 平井伸治・鳥取県知事(全国知事会長)

 新型コロナウイルス対策は焦眉の課題であり、一番に対策の道筋をつけていただきたい。10月15日に政府は感染「第6波」に備えた対策の骨格を示したが、それが現場に適合するかについては各都道府県で意見が出ている。病床数を2割増やすとの骨格の方針では、和歌山県はすでに病床を増やして、第5波で全員入院を実現している。各県の個別事情を踏まえ、実情に即したプランを作る必要がある。

 最終盤に入ったワクチン接種を、打ちたいと思っている人全員が打てるよう政府が責任もって進めることを望む。米国の例では12歳未満にワクチン接種を解禁する方向になっている。接種対象の拡大なども速やかに方針を出してほしい。

 数十兆円規模とされる経済対策では、コロナ対応に限って自治体の裁量で自由に使える「地方創生臨時交付金」が特に重要。経済対策の中に盛り込んでいただきたい。

 これまでの政府の新型コロナ対策は、ある程度都道府県の言い分も聞きながら進めていたと思う。ただ、緊急事態宣言の発出などで時機が遅れることもある。都道府県が求めたら、直ちに措置が取れるようにしていただく必要がある。第5波では子供の感染が目立った。飲食店の協力だけでは感染拡大に対処しきれない。臨機応変に対策が取れる仕組みを作ってもらいたい。

 感染拡大を押さえ込むロックダウン(都市封鎖)の是非が積み残しの課題になっている。

 全国知事会はあえて「ロックダウン的」という表現を使っており、中国・武漢とか、イタリア・ミラノなどで見られたような厳格なロックダウンとは異なる手法の検討を促してきた。政府は急激な感染拡大では、一定の人流抑制につながるような措置について、法的手段を新たに検討したいとしていた。こうした動きに注目し期待していきたい。

 コロナ禍からの出口戦略にはいろいろな議論がある。

 個人的にいえば、経口治療薬の登場が、流れを変えるゲームチェンジャーになり得ると思う。残念ながらワクチンの場合は、2回接種しても感染するブレークスルー感染がある程度あり、英国やシンガポールの状況をみても、ワクチン接種が済んだからといって感染が収まるということにならない懸念がある。仮に感染したとして、それが治る病気になるかどうかは、大きな意味を持ってくるのではないか。

 コロナは政府と現場が一緒になって乗り越えないといけない。政府との間で定常的な協議の場があると、地方レベルとしては非常に有効だ。出口戦略、ワクチン接種のやり方などの課題がある。ただちに協議の機会を作ってもらいたい。(聞き手 松田則章)

 ひらい・しんじ 昭和36年、東京都生まれ。59年に自治省(現総務省)入省。選挙部や税務局で勤務したほか、兵庫県、福井県に出向した経験がある。鳥取県では総務部長、副知事を経て、平成19年に知事選に立候補して初当選、現在4期目。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会委員を務める。9月に全国知事会長に就任した。著書に「鳥取力 新型コロナに挑む小さな県の奮闘」(中公新書ラクレ)。

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