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新資本主義会議 見えぬ成長戦略、具体策が急務

 新しい資本主義実現会議が8日決定した緊急提言は本格始動した岸田文雄政権が経済政策で独自色を出す最初の機会となり、成長と分配の好循環に向けた個別政策を書き込んだ。財政の「単年度主義」脱却を唱える首相の意向でずらりと並んだ基金は無駄の温床になりやすく、長年実現できていない成長率の底上げに向け今後は具体的な道筋を示すことが求められそうだ。

 首相は8日の会議で「真っ先に取り組む課題について、今回の経済対策で実行に移すことで、早速、新しい資本主義を起動していきたいと思う」と強調した。

 好循環に向けまず重要となるのは、分配の原資を生み出す成長戦略だ。デジタル化や脱炭素など先端技術に力を入れる点は歴代政権と大差ないが、10兆円規模の大学ファンドや重要技術の研究開発を支援する基金など、複数年度で運用できる基金の創設を列挙した。

 財政の単年度主義を脱却し中長期的視点で成長を目指す姿勢は首相の持論だ。とはいえ、基金は財政当局のチェックが甘くなることで運用に無駄が生じやすく、当初の狙い通りの効果が上がらないことも多い。

 一方、提言では格差是正を重視する首相の姿勢を反映し、分配戦略も詳述されたのが特徴だ。賃上げ企業に対する法人税の優遇措置を「本年末の来年度税制改正において結論を得る」と明記。介護士や保育士などの賃上げにつながる公的価格の見直しも追加経済対策で前倒しし、令和4年度から恒久措置にする方針を書き込むなど成長戦略よりも具体的な記述が目立った。

 少子高齢化やデジタル化の遅れなどによる生産性の低迷で、日本経済の実力を示す「潜在成長率」は長年0%台にとどまる。提言でも地方にデジタル化を拡大する「デジタル田園都市国家構想」など、成功すれば生産性の底上げにつながる政策もあるが、地方自治体向けの「大規模な交付金」を除けば具体性に乏しい。

 いまだに漠然とした「新しい資本主義」が日本経済に好循環を作り出すには、4年度の成長戦略をまとめる来春までに、さらなる肉付けが求められそうだ。

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