一部では、中国の不動産市場は中長期的な調整期に入ったとの見方がある。しかし、都市化の進展や所得増加が今後も見込まれる中、不動産市場は成長途上にあると考える。不動産開発投資が10年前の3倍となるなど、市場は着実に成長してきた。この背景には住宅需要の拡大がある。
まず、都市化が住宅の新規需要を生み出してきた。農村部から都市部への人口流入は年間1000万人を上回る規模で続いている。所得増加に伴う住宅の住み替え需要も大きい。1人当たりGDP(国内総生産)が1万ドルへ高まる中、新築マンションへの住み替えが増えている。
国連の予測では都市人口は2040年までに現在よりも2億人増加する。加えて、所得の増加余地も大きい。政府は政策を総動員して35年までの所得倍増を目指す構えである。また、現在5億人が生活する農村部では住宅の公有制が続いており、農村住宅の私有化で新たな市場ができるであろう。
一方で、不動産市場の成長ペースは政府によって厳しく管理されている。例えば、不動産企業は住宅購入希望者のその都市での在住履歴が3年ないと販売してはいけない、といった条件が都市ごとに課されている。不動産企業の資金調達が抑制されるなど、供給面の抑制策もとられている。今年に入ってから住宅需要が縮小し、不動産企業の資金調達環境が悪化したのも、政策要因が大きい。
もっとも、政府が今年8月からこうした規制を緩和し始めたことで、国慶節の連休(10月1~7日)明けに主要30都市の住宅販売は再び拡大に転じた。朝令暮改的な対応は混乱を招くが、今後、需要が再び過熱したタイミングで、不動産税が複数の都市で導入されると予想する。政府は不動産開発投資のGDP比がおおむね横ばいとなるよう、アクセルとブレーキを頻繁に踏み変えることで不動産市場の成長ペースを調整すると見込まれる。
(日本総合研究所調査部主任研究員 関辰一)
せき・しんいち 平成18年早大大学院経済学研究科修士課程修了。20年日本総合研究所入社、31年から調査部主任研究員。拓殖大学博士(国際開発)。専門分野は中国経済。著書に「中国 経済成長の罠」。40歳。中国上海出身。