11月中旬に入り、最低気温が一けた台の日も増えてきた北海道。多くの家庭で暖房器具を使い始めているが、今年は原油高に伴い灯油高騰がじわりと家計を圧迫し、運送業など事業者にも影響がおよぶ。石油情報センター(東京都)が10日に発表した道内のガソリンと軽油価格は前週よりわずかに下がったが、灯油は値上がりが続く。道民からは切実な声が上がるが、同センターは「先行きが不透明」として今後も高止まりの可能性を指摘している。
灯油は年明けから上昇
石油情報センターによると、10日現在の1リットルあたりの道内灯油価格は前週比10円高の108円30銭で、平成20年1月以来約13年ぶりの高値となっている。70円台後半で推移していた昨年末からみると、40円近く値上がりし、約1・5倍だ。
その背景について担当者は(1)新型コロナウイルスの感染者減少で経済活動が回復(2)産油国がコロナ再拡大を懸念し増産に慎重(3)天然ガスの価格上昇で原油需要が増加-としている。
道内で使用されている暖房用のエネルギーは、ガスや電気が2割弱なのに対し、灯油が8割以上を占める。消費量も全国平均の5倍以上で、2人以上の世帯では年間1千リットル程度になるという。
北海道消費者協会の試算によると、現在の灯油価格が続いた場合、シーズンを通して約2万1500円のコスト増になるという。同協会は生活困窮者への支援が必要として、10月中旬に道経済産業局などへ価格抑制と安定供給を求める緊急要請を実施した。連合北海道も15日、道に対して灯油支援に向けた予算措置を要請する予定で、緊急支援を求める声は少なくない。
事業者からは悲鳴も
ガソリンと軽油も高止まりが続く。10日現在の道内のガソリン価格はレギュラーが1リットルあたり前週比30銭安の168円50銭、ハイオクも30銭安の179円70銭。軽油は20銭安の151円40銭となっている。
北海道トラック協会(2918会員)の西原英二常務理事は「会員の7割以上を占める中小零細企業にとっては死活問題。上部団体を通じて値上がり分を運賃に転嫁できる対策を国に求めている」と語る。
ボイラーの燃料に灯油や重油を使うクリーニング業界では「燃料の共同購入など対策をしているが効果は薄い」と北海道クリーニング生活衛生同業組合(280会員)の橋本喬史副理事長。コロナ禍で需要が減る中、人件費や原材料などの経費は変わらず「自分の給料を減らして対応する同業者もいる」と現状を語る。昨年は組合員に災害給付金を支給。今年は会費徴収の一時停止など自助努力も進めているが「情勢は厳しい。今は耐えるのみだ」と話した。
省エネ暖房グッズが人気
ホームセンターなどでは省エネの暖房グッズが人気だ。札幌市豊平区のDCMホーマック西岡店は9月から、住宅の窓や室内扉などに置く冷気侵入防止用の断熱マットやシートなどの特設コーナーを設置した。販売実績は前年同期比3割増で「『灯油が高騰したので買いに来た』という方が多い」と池田洋一店次長(51)。屋外ホームタンクからの灯油盗難を防ぐ鍵付きの給油口キャップカバーも好調といい「灯油が高くなると必ず盗難事件が起きる。今年は自衛の動きも早い」と語る。
札幌管区気象台が発表した令和4年1月までの3カ月予報によると、北海道地方の気温は平年並みの予想という。(坂本隆浩)