冬の高速道路で安全な除雪を-。ロータリー除雪車の自動走行除雪技術の開発に取り組んでいた東日本高速道路(ネクスコ東日本)北海道支社が、北海道岩見沢市で実証実験を報道陣に公開した。半年近く積雪下で暮らす道民にとっては、移動時に利用する高速道路の安全は重要ポイント。早い時期の実運用に期待がかかる。
8年越し
開発したのは車両前方に回転羽根を搭載したロータリー除雪車の「自律走行」と「除雪装置操作の自動化」の2つの技術だ。
平成29年、日本列島のほぼ真上を通る軌道を持つ「準天頂衛星システム(みちびき)」による位置情報と自社開発した「運転支援システム(ガイダンスモニター)」で、車両を自律走行させる技術を確立。これを土台に高精細な地図情報に基づいて路肩のガードレールなどの構造物を避けながら、自動で除雪できる仕組みを作った。
現状、高速道路の除雪作業は車両を運転するドライバーと、安全確認などを行うオペレーターの2人で行われている。しかし将来的に、熟練作業者の高齢化や労働人口の減少による担い手不足が想定されている。
同支社はこうした将来予測を受けて、25年に除雪車による除雪作業の自動化技術の研究をスタートした。北海道大学などの協力を得ながら開発を進め、8年越しで実用化にめどをつけた。
今冬は積雪下で試験
同支社の市川敦史技術部長は除雪作業の自動化のメリットについて「現在は2人体制だが、1人体制に省力化できるという点は大きい。熟練者が緊張した中で行っている作業負担を軽減でき、なおかつ非熟練者でも作業に対応できるようになる」と話す。
この冬には積雪下で実証試験を行う計画だ。道内有数の豪雪地帯である岩見沢市を通る道央自動車道などで自動走行による除雪車の動作確認を行うことにしている。
システムの完成は令和4年度の予定で、実際の現場での運用が可能と判断されれば、同支社が道内に保有している30台のロータリー除雪車を対象に、更新時期をみながら段階的に導入する方針だ。
人口減で「開発が急務」
冬道自動運転技術に関するさまざまなプロジェクトに参加している北海道大学大学院工学研究院の江(え)丸(まる)貴(たか)紀(のり)准教授(48)は、この技術について「高速道路の路肩という限られたエリアで安全な作業が可能。オペレーターも作業に専念できる」などとメリットを挙げる。
「人口減少時代を迎え、新型コロナウイルス禍が回復基調に向かっていることを考えると、この先は除雪作業員が人手不足になるかもしれない。自治体の除雪費は高まり、除雪そのものも、今のような十分な作業ができない可能性もある」と江丸准教授。除雪車の自動運転が本格的に社会に導入されるのは約10年先とみているが「技術開発を急ぐ必要がある」と話している。(坂本隆浩)