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大手商社、相次ぎ再生エネ発電所運営 背景に投資余力と海外経験
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丸紅が日本企業として初めて参画した英国南東部の洋上風力発電所。海外での運営ノウハウを国内でも生かす(丸紅提供) 大手商社が相次ぎ、国内の太陽光や風力、地熱発電など再生可能エネルギーの発電所運営に乗り出す。原発比率ゼロが議論となるほか、7月から固定価格買い取り制度が始まり、地方自治体や新規事業者が商社と組むケースが増えている。
背景には、発電所運営のノウハウを持つ電力会社が原発稼働の停止によって経営体力が低下しているため、これまで海外で電力事業を手がけている商社の経験や投資余力が注目されているという事情がある。
「世の中には当社で大丈夫かという思いがある中で、三井物産という産業界の『エース』と組むことで安心感につながる」
8月29日、三井物産と共同で鳥取県米子市で約3万9500キロワットという国内最大級の大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を発表したソフトバンクの孫正義社長は、事業の確実性を訴えた。
メガソーラーは建設すれば終わりではない。太陽電池をはじめとする資機材の調達、低コストの建設、売電契約、発電後の保守や事業会社の運営など効率的な経営が不可欠だ。
その点、スペインなど海外で太陽光発電所を運営するノウハウを持つ三井物産と組むことで、発電量が不安定な太陽光でも持続可能な経営につなげるのが狙いだ。
三井物産はソフトバンクだけでなく、東京海上アセットマネジメント投信と組み、北海道など全国10カ所でメガソーラー運営を受託する計画だ。両社が共同で専門のファンドを立ち上げて資金を調達。発電所の資産はファンドが買い取り、物産が管理やメンテナンスを行う。
三菱商事も、タイで建設中の世界最大級のメガソーラー(7万3000キロワット)などの経験を生かし、熊本県などと阿蘇くまもと空港隣接地に2000キロワットのメガソーラーを建設・運営する。
風力発電でも、丸紅は茨城県から約25万キロワットの洋上風力の事業化調査を受託した。同社は英国の総発電能力17万2000キロワットの洋上風力事業に参画しており、その経験が買われた。福島県でも100万キロワット規模の大規模洋上風力発電の官民プロジェクトが始動。
政府は昨秋、大手商社に参画を打診していたが、今年3月には丸紅を主幹事として三菱重工業や新日本製鉄、三菱商事など10社や東大が日本連合を結成、世界初の「浮体式」技術に挑戦中だ。
丸紅では「国内の雇用創出だけでなく、洋上風力を計画する欧米やアジア市場も開拓できる」(福田知史・国内電力プロジェクト副部長)と意気込む。
このほか、地熱発電の開発でも海外で経験を持つ住友商事や三菱商事、丸紅が開発に参画している。
いずれの計画も、商社ならではの資金力と経験を生かし「再生エネルギーは国内も重視する」(三井物産の飯島彰己社長)方針だ。
ただ、再生エネが実際に稼働するための送電設備の整備は事業者負担となるため、これらのコストを含めた事業計画の採算性が課題となりそうだ。(上原すみ子)