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MVNO契約者、年率4割の伸び 接続料金めぐる訴訟など課題も

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MVNO契約者、年率4割の伸び 接続料金めぐる訴訟など課題も

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MVNO契約者数(累計)  携帯電話事業者の通信回線の一部を借りて独自サービスを展開する仮想移動体通信事業者(MVNO)の契約数が急増している。今夏時点の累計契約者数は520万件を突破、年率4割近く伸びている。

 国内市場の成長鈍化で携帯電話全体の契約者数が頭打ちの中、安価に独自サービスを提供できるMVNOは今後の成長株。ただ、事業者間で接続料金をめぐる訴訟が起きるなど課題も浮上している。

 MVNOは通信市場への新規参入を促すため、総務省が2000年代初頭から推進。01年にデータ通信会社の日本通信がDDIポケット(現ウィルコム)からPHS用データ通信網を借り、世界初のMVNOによるデータ通信サービスを始めた。

 その後、データ通信、音声通話とも新規参入が続出。ウォルト・ディズニー・ジャパンがソフトバンク回線を利用し、独自携帯電話「ディズニー・モバイル」を手がけるほか、象印マホービンはNTTドコモ回線を使い、独り暮らしの高齢者が給湯ポットを使うたび遠隔地の家族にeメールが届く「みまもりほっとライン」を展開。

「成長余地は大きい」

 トヨタ自動車はKDDI回線で車両事故時に車の位置情報を発信するサービスを行うなど、各社とも本業と通信事業を絡めた複合サービスで契約数を伸ばしている。

 MVNO事業者は自社で回線を持たないため設備投資負担は軽く、その分、安価なサービスが可能だ。こうした点も普及に拍車をかけ、今年6月末時点の契約数(利用者数)は522万件。この1年間の伸び率は38%と、MVNOを含む携帯電話・PHS全体の7%を大きく上回り、「成長余地は大きい」(総務省総合通信基盤局)。

 ただ、急成長の裏で既存事業者との摩擦も起きている。回線への接続料をめぐり、4月に日本通信が「ドコモが不当な算定方法で接続料をつり上げている」としてドコモを東京地裁に提訴、係争中だ。

「ウィン-ウィンの関係」

 総務省のガイドラインでは接続料は「適正原価に適正利潤を加えて」算出するが、「適正原価」の範囲が必ずしも明確ではなく、今後も事業者間の紛争を招く恐れがある。同省は10月に検討会を設置し、本格的なルール整備に乗り出した。

 MVNOは契約数が増えるほど、通信事業者も回線の賃貸収入が増える「ウィン-ウィンの関係」(同)だが、回線を貸す側最大手のドコモと、借りる側最大手の日本通信の争いが泥沼化すれば、新規事業者が参入に二の足を踏む事態に陥りかねない。(渡部一実)

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