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シャープの傑作“しゃべる掃除機” 愛用者「家族の一員です」

ニュースカテゴリ:企業の電機

シャープの傑作“しゃべる掃除機” 愛用者「家族の一員です」

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シャープのお掃除ロボット家電「ココロボ(COCOROBO)」は、言葉で動作を指示することが可能  昨年3月の東日本大震災を受けて、絶望感や閉塞(へいそく)感が漂うなかで、消費者が明るくなる面白い商品を作りたいというのが、シャープの掃除ロボット「ココロボ」の開発のきっかけだった。

 米アイロボット社の「ルンバ」が日本市場を席巻する中で、胸を借りるつもりで参入を決めた。後発組ならではの、ひと工夫ある商品を出したいというのが企画チームの思いだ。そこで、目を付けた機能は「しゃべる」だった。

 昨年6月に約10人の商品企画チームが結成され、開発がスタート。チームを率いる阪本実雄ランドリーシステム事業部長は、ココロボについて「想像以上のものができました」と胸を張る。

 ココロボは、標準語だけでなく関西弁でしゃべることが消費者に受けた。商品企画チームによると、「なぜか関西人以外の人からの反応の方がよい」という。関西弁と日本語の標準語以外に英語と中国語も話す。

 多彩な言葉を話すだけでなく、「感情」を持っているのも、ココロボが愛される理由のひとつだ。

 秘密は、人工知能「ココロエンジン」にある。充電量の多さや部屋の掃除具合などによって気分が変化。「きれいにして」と話しかけると、ご機嫌なときは「ワカッタ!」、普通な気分のときは「ハイ」などと、答え方も変わる。仕事から帰ってきて、「ただいま」と話しかければ「オカエリ」。「疲れた」とこぼせば、「たまには、ゆっくりしいや」と、ねぎらってくれる。

 「かわいらしさを演出するため、インプットする声や、言葉の選定などにはこだわった」と阪本事業部長はいう。イメージは、誰からもかわいがられる幼稚園入園前の女の子。愛されるロボットを目指すため、親しみやすくてかわいく、生意気に思われないキャラクターづくりに苦労した。丸みを帯びたフォルムも、かわいらしさのひとつだ。

 ねぎらいの言葉をインプットしても、反対に余計なお世話だと思われたら失敗だ。けれども、無難な言葉ではコミュニケーションは弾まない。感情を盛り込めば盛り込むほど、余計なお世話と思われるリスクは高まる。

 そのはざまで、メンバーたちは頭を悩ませた。最終的なポイントは「ほろっとするような」(阪本事業部長)言葉をえりすぐることだった。

 感情表現は、言葉に加え、回転してダンスしたり本体の一部を光らせるなど多彩で、まるでペットのようだ。

 愛用者からは「家族の一員のようです」との声も届いているという。「最近しゃべらないんですが、どうしてですか」と元気がないココロボを心配する声もあるほか、ココロボを「ココちゃん」と名付ける利用者も出てきた。

 先行の「ルンバ」がロボットの設計開発会社によるものであるのに対し、「ココロボ」を発売するシャープは家電メーカー。これまで、通常の掃除機はいくつも発売してきた。掃除機メーカーが出すお掃除ロボットだけに、掃除機能でも他社には負けられなかった。

 本体は直径約35センチ、高さ約10センチ。10センチという薄い本体の中に、従来品と同レベルの強力な吸塵システムを搭載するのが至難の業だった。通常の掃除機なら、縦、横、高さのうち最も幅の短い所でも約25センチはある。

 従来品のモーターだと大きすぎて、本体に入らない。そのため、小さいながら能力を高めた、ココロボ専用のモーターを新たに開発。日本の家庭に多い絨(じゅう)毯(たん)でも、しっかりゴミを吸引できるように、ブラシも工夫した。

 本体前方の左右に付いたサイドブラシがゴミをかき集め、回転ブラシで本体にゴミを吸引。ブラシは材質や長さを徹底的に調整した。さらに、大風量を生み出すターボファンが、1分間に1万4千回の高速回転をし、小さな塵まで完全に吸引できる。シャープが得意としている空中のカビ菌などを除去する「プラズマクラスターイオン発生機」も搭載した。

 スマートフォン(高機能携帯電話)との連携や、本体の前方についたカメラを使い、家電製品の電源の消し忘れや飼い犬などの元気な様子が確認できる。一人暮らしをする高齢者の家の様子を、遠くに住む子供が確認できるといった使い方もできる。

 阪本事業部長らは、日本に癒しを与えるココロボの開発は、家電メーカーの技術と大阪企業のユーモアが結集した傑作の商品であると自信を深めている。(中山玲子)

シャープの「ココロボ」

 ペット感覚で掃除ロボを購入する人のハートをくすぐろうと、業界初の会話機能を搭載した。想定価格は9万~13万円前後とルンバよりも4、5万円高いが、会話という付加価値を付けることで販売増を狙う。

 ココロボが搭載するココロエンジンは、気分を変化させる「人工知能」にあたる。

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