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楽しいアイデア2000件 商品化率1%未満の“狭き門”

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楽しいアイデア2000件 商品化率1%未満の“狭き門”

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【わが社のオキテ】

 日本酒やビール、ワインの友“おつまみ”。このおつまみ向けの珍味食品を手がける伍魚福(ごぎょふく)は、自社商品を「エンターテイニングフード」と呼んでいる。「食べた人に何よりも楽しんでほしいから」という山中勧(かん)社長(46)の信念からだ。社員は毎月2つの商品アイデアを出すのが決まりで、おいしさとおもしろさの創出に社員総がかりで知恵をしぼる。年間の商品企画数はざっと2千。しかし、商品化率はたった0・7%という狭き門だ。

おいしさ、食べやすさ、ユニークさを求めて

 スーパーの冷蔵ショーケースの一角にある「伍魚福」のコーナーには、同社の商品がにぎやかに並んでいる。

 同社が販売する商品はざっと350品ある。チルド系が約100品、ドライ系が約150品。取引先の小売店は全国に約4千店あり、スーパーがそのうち約6割、酒販店が約3割を占めている。

 同社は自社工場を持たない、いわゆるファブレス企業。商品を企画、開発し、全国に約200ある協力工場に生産を委託している。「それぞれの土地の素材を使った商品を、その地で生産できる」(山中社長)のが強みだ。

 そんな同社の生命線は、ズバリ商品アイデア。おつまみだけに、おいしいことに加え、食べやすさ、価格の手ごろさ、ユニークさなどが要求される。斬新さだけでは一時のヒット商品で消える。飽きられないことも大切な要素だ。

 商品を企画するのは「商品部」のメンバーだが、彼らだけにまかさずに社員全員で考えようと、平成20年に取り組みを始めた。活動を通して社員の経営参画意識を高めようという山中社長の考えがあった。

年2千件のアイデアを社長が13項目で判定

 さて、社員のアイデアはいかに出され、どう商品化されるのだろう。

 社員はパート従業員を含め70人。毎月最低社員は2つ、パートは1つの商品アイデアを出さなければならない。

 毎月170件前後のアイデアが出され、月末に集計して、翌月初めの商品企画会議にかける。その間に山中社長が目を通し、1つ1つについて13項目でチェックする。その作業たるや膨大で、そのために土日がつぶれるほどだ。

 ちなみにその13項目は、商品そのものについては(1)エンターテイニング度(2)オリジナリティー(3)神戸ブランド発信度(4)こだわり度(5)経済効果(売り上げ見込み)(6)製造実現性(現在の協力工場で作れるか)の6つ。

 そこに、(7)スーパー(8)酒販店(9)おみやげ店(10)通販(11)業務用(12)コンビニ(13)百貨店の流通先7項目で、それぞれの販路に向いているかどうかの評価が加わる。

 それぞれ5点満点で山中社長が判定。最高点は65点だが、そんな商品はない。合計点を元に最終的に5段階で総合評価し、「5」を獲得したアイデアについて、具体的な商品化に向けた作業が始まる。

 アイデアは人によってクセがあるという。「主婦のパートさんは、やはりうちで作る総菜系が多い。突飛(とっぴ)なことばかり考える社員、ダジャレ系が好きな社員など、個性が表れておもしろいですよ」と山中社長。月に100件を超えるアイデアを出す社員もいる。

 昨年の場合、年間のアイデア数は新商品約1500件、改良品約500件の合わせて約2千件。このうち総合評価で「5」を獲得したのは104件。

 そして、ここから実際に商品になったのは新商品4件、改良商品10件のわずか14件。「年々商品化率は高まっている」(山中社長)とはいうものの、それでもわずかに0・7%だ。

 総合評価で「5」がつかなかったり、ついても商品化が見送られたアイデアについて、発案者がどうしても納得できない場合は、半年に1回「敗者復活戦」として、再度チャレンジできる仕組みもある。

社員のアンテナが敏感に!!

 この取り組みで生まれた一番のヒット商品が、昨年11月に発売した「クリームチーズ生ハム包み」(498円)。ある女性社員が発案したもので、現在の月間販売個数は1万個を超え、まだ伸びつつある。

 「この活動で、いつも商品のアイデアを考えるという姿勢が社員に浸透しました。旅行先で考えたとか、テレビを見ていて思いついたとか…商品に対する感度が非常に高まりました」と山中社長。そして「社内がワイワイと楽しくなって、それがパワーになったことが大きい」という。

 同社のスローガンは「神戸で一番おもしろい会社になろう」。その通り、商品だけでなく、会社も“エンターテイニング”なのだが、単におもしろいだけの会社ではない。

 「卓越した経営の仕組み」を有する企業を表彰する制度である関西生産性本部の「関西経営品質賞」で、23年度の「奨励賞」を受賞した。次は上位の「関西経営品質賞」をめざし、経営に磨きをかける毎日だ。(佐久間史信)

◇会社データ◇

本社=神戸市長田区野田町8-5-14

設立=昭和30年4月

事業内容=珍味食品の製造卸

売上高=22億円(平成24年2月期)

従業員数=70人(同10月末)

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