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オフィスの椅子はバランスボール 奇抜な試み…その理由は?
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バランスボールには、ころがらない対策が施されている=京都市山科区
なんとも奇抜な試みをする会社があるものである。美容室向け頭髪化粧品メーカーの中野製薬は、オフィスにあるすべてのいすをバランスボールに取り換えた。仕事をしながらエクササイズもして、社員の健康を増進するのがねらいで、中野耕太郎社長(52)の発案で今春、導入した。以降、「中性脂肪値が半減した」「体が引き締まった」と社員の評価は上々。居眠りしたらころがってしまうのではないか…なんて心配しながら、一見“宇宙空間”のようなオフィスをのぞいた。
忙しそうに電話を取る女性社員、真剣な表情でパソコンに向かう男性社員…。どこにでもある会社の風景だが、社員の後ろに回ると驚きの光景に一転する。
社員が座っているのが、いすではなくて、直径70センチ前後の丸いバランスボールなのだ。それで平然と仕事をしている姿が、なんとも奇妙なのである。
きっかけは腰痛に苦しんでいた中野社長が、通っていたフィットネスクラブでバランスボールを勧められこと。試しに会社で秘書らと使ってみたところ、みごとに腰痛が解消された。
日ごろから「社員は家族も同然。みんなが健康であってこそ、初めて最高の製品やサービスを届けられる」という考えをもっていた中野社長は、さっそく本社や滋賀県の工場、東京支社のいすを全部撤去させ、計400個のバランスボールを購入、配置した。今年4月のことだ。
さすがに社員らも、当初はコロコロ転がる「いす」にとまどったという。そこで、ボールを固定するためのリングを作ったり、足で踏んで使う空気入れを各部屋に用意。社員それぞれが自分にしっくりくるように調整できるようした。
ころがってしまわないための対策はちゃんとあったのだ。これで社員たちの“不安”も解消。徐々に溶け込んでいき、仕事に集中できるようになった。
とくに会社として健康面での効果を検証したわけではないが、マーケティング本部の安東希実子さん(28)は「背もたれがないから姿勢がよくなり、背中が引き締まりました」と喜ぶ。
また、同本部の谷田綾子さん(30)は「自然にいろんな姿勢でストレッチできるし、集中して仕事ができます」と話す。
数値の面で歴然とした効果が出た社員もいる。「日ごろは運動しない」と“豪語”していたある幹部は、バランスボールになってから、中性脂肪値がそれまでの213から116に半減、その効果に舌を巻いたとか。
健康面だけだなく、仕事の効率アップにもつながったこのバランスボールは大成功だった。
同社は社員の健康増進に向けて、次々とユニークな取り組みをしている。
例えば禁煙。平成4年から活動に本腰を入れて取り組み始め、禁煙者には月2千円の「禁煙奨励金」の支給を始めた。これらをきっかけに社内の禁煙率がどんどん高まり、19年には全社員禁煙を達成した。
また、約10年前には「ノーエレベーターデー」を設けた。ところが、これが徐々に拡大して、いまや当たり前となり、だれも使わなくなって、毎日がノーエレベーターデーとなってしまった。
今回導入したバランスボールは、こうした禁煙やノーエレベーターデーの流れの延長線上にある。もちろん、妊娠中や風邪などで体調が優れない社員に、バランスボールやノーエレベーターを強制することはないという。
京都といえば、任天堂や京セラなど個性豊かな企業が数多くあるが、こうした大企業でなくても、独特の企業理念を実践している会社があるのだ。
バランスボールの次は、いったいどんな取り組みで驚かせてくれるのだろう。(内海俊彦)
本社=京都市山科区東野北井ノ上町6番地-20
設立=昭和34年9月
事業内容=シャンプー、リンスなど頭髪化粧品の製造・販売
売上高=非公表
従業員数=約260人