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知らない人が多い「著作隣接権」 漫画家の出版社離れも…なぜ必要?
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電子書籍市場の拡大が見込まれる中、出版社などに著作権に準じる著作隣接権を与える法制定の議論が進んでいる。作家や漫画家らの著作権者に加え、出版社なども海賊版への訴訟を直接行えるようにし、作品の電子化を推進するのが主な目的だ。流通環境の整備につながるとする声の一方、権利内容が不明確で著作権者の利益を妨げる懸念も指摘されている。漫画家の赤松健氏と専修大文学部教授で出版デジタル機構会長の植村八潮氏に意見を聞いた。(山田泰弘)
「デジタル時代が到来した今、紙の印刷物の時代に比べ、海賊版対策は急務となっているが、現在の著作権法では、出版社は海賊版に対し、直接訴訟を起こすことができない。電子データはコピーが容易で、あっという間に世界中に海賊版を流通させることもできる。紙の本をコピーして、紙の海賊版の本を作っていた時代とは、スピード感が桁違いだ。電子書籍を含めた出版物の権利を、デジタル化時代に対応できるものにしなければならない。小説や漫画などを世の中に伝達する形に仕上げた出版社などにも著作隣接権を認め、海賊版に素早く手を打てるようにすべきだ」
「もちろん役立つ。海賊版対策が容易になるほか、小説などを紙の本に仕上げた出版社の同意を得ずに、著作権者が同じ版型の電子書籍を勝手に作り、売り出すような事態も防げる。作品は、著作権者の手元を離れた時点で流通可能な商品となるのではなく、出版社が企画や宣伝、編集作業を行い、商品にしていることを重視すべきだ。著作権者と出版社が、紙の本を出すための出版契約と同時に、電子書籍の出版契約も結ぶことを一般的にし、著作隣接権と併せて、出版における契約関係を明確にすることが、健全な市場環境の育成につながる」
「出版社だけでなく、作家や漫画家の著作権者や法律の専門家も交えて、超党派の議員の勉強会を開いている。さまざまな立場からの意見を取り入れて議論を進めているし、トラブルが起きた際に、中立的な立場で解決を図るADR(裁判外紛争解決手続き)機関を設けることも検討されている。出版社の権益拡大のためというのは、臆測にすぎない」
「それは間違った捉えられ方だ。書店なども含む日本の出版文化の維持発展をどうするかに関わる問題だ。電子書籍市場は、従来の紙の本と状況が異なり、グローバル性があり、海外企業が多く参入してくる。今までのように、作家と出版社がどのような契約を結んでいるかが曖昧で、権利関係が不明確な状況では、海外企業に対して著作権者や出版社の正当な権利を主張するのが難しい。デジタル化の速度に遅れずに、出版物流通を健全にしていかないと、出版文化が成り立たず、外資に食い荒らされてしまうかもしれない」
「名前を聞いたことはあるという人は増えていても、作家や漫画家など著作権者のうち、おそらく80%程度の大多数は『良く分からない』と思っているのではないか。残る20%のうち、19%は反対し、1%が賛成しているような構図だと思う」
「独占的な使用権を得た作品の海賊版について、出版社に差し止め請求権が生じるという範囲だけに限定した著作隣接権なら、あっても良いと思う。ただ、一度、著作権に似た権利ができてしまうと、それを手がかりにしてその後、著作権者に不利な方向に権利の内容が変化したり拡大していく懸念がある」
「文字情報の作品については、原稿から単行本などの形にする際に、原稿の形のまま本にするのではなく、文字や図の配列などかなり多くの要素について、出版社が関わってくる。しかし、漫画の場合は、絵にセリフを付けた原稿がほとんどそのまま、雑誌に掲載され、単行本にもなる。文字情報の本については、著作隣接権を認めることも理解できるが、漫画の場合には合理的な理由が見つからない。出版ビジネスにおける漫画の重要性からすれば、文字情報の本ときちんと分けて議論されるべきだが、そうならず、ごちゃ混ぜに論じられている状況だ」
「全く同意できない。新たな権利ができれば、一つの作品について、異なる意見を主張できる権利関係者が増えることになり、法的トラブルの増加につながる。確かに、著作隣接権があれば、出版社が海賊版を見付けた際に、著作権者に連絡を取らなくても対抗策を打てることになるが、現在でも実質的な対策はそれに近い形で行われているはずだ。現行法では、著作権者が海賊版対策の訴訟に振り回されてしまうといわれるが、出版社と弁護士に代行してもらえばよいだけだ。著作隣接権が必要だという合理的な理由がない」
「特に漫画家には、著作隣接権に反対する人が多い。自分の書いたものから何かを勝手に奪っていくような感じだ。自力で作品を売る力がある人気漫画家の中には、既存の出版社を通さずに電子版を売り出す人が出てくるだろう」
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うえむら・やしお 昭和31年、千葉県生まれ。56歳。東京経済大コミュニケーション学研究科博士課程修了。東京電機大出版局に勤務し、局長を経て、平成24年、専修大文学部教授に就任。出版デジタル機構社長を経て、現在は会長。専門は出版学などで、電子書籍の研究に携わってきた。
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あかまつ・けん 昭和43年、東京都生まれ。44歳。中央大文学部卒。平成5年「ひと夏のKIDSゲーム」でデビュー。代表作にともにアニメ化された「ラブひな」や「魔法先生ネギま!」。22年に絶版となった漫画やライトノベルの電子書籍配信会社「Jコミ」を立ち上げ、社長に就任。