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スマホ市場成熟化、早くも転機か 主導権争い激化…台風の目はドコモ
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スマートフォンの国内出荷台数 携帯電話市場は2013年、スマートフォン(高機能携帯電話)の出荷比率が80%を超える見通しだ。スマホが完全に主流となるなかで、端末の高機能化や高速データ通信サービスの設備展開、クラウドコンピューティングの本格活用などの環境整備も進展する。ただ、13年は成長一辺倒だったスマホ市場に転機が訪れそうだ。少子高齢化の影響がスマホ市場にも押し寄せ、市場の成熟化が現実味を帯びてくる。
12年は携帯電話事業者全社がスマホ用高速データ通信サービス「LTE」の提供を始めた。前年から提供しているNTTドコモに続き、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスが相次ぎサービスを開始。スマホの急速な普及とあいまってLTEの通信速度や人口カバー率を競った。
収益基盤が完全にスマホに移行するなか、各社がLTEのサービス拡充にしのぎを削る状況は13年も続く。ドコモは12年9月末時点で1万4000局だったLTE基地局を13年3月までに2万3000局に増設。ソフトバンクはいち早く「3月中に2万局にする」(孫正義社長)計画だ。順調にいけば、LTEの人口カバー率は都市部を中心に3月にも9割近くに達する見通しだ。
端末機能では、演算機構を4基内蔵したクアッドコアと呼ばれるスマホ用CPU(中央演算処理装置)の出荷が本格化。端末側の処理性能を底上げしそうだ。
スマホの弱点ともいえる電池の持ち時間も飛躍的に伸びる可能性がある。米半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ(TI)は、CPUやチップセットの動作効率を向上させることで、充電なしに丸1日スマホを使えるようにする技術開発に取り組んでいるという。米インテルやアップルなども、この分野の技術開発に注力しており、13年にもスマホの電池寿命が大幅に伸びる可能性がある。
13年は「スマホを持っているのが普通」(業界関係者)になる一方で、成長分野としてのうま味はなくなってくる。
スマホの普及率が高まるに伴い、出荷ペースが鈍化するのは確実だ。民間調査会社、MM総研(東京都港区)の調査によると、13年度の携帯電話総出荷台数は4370万台で、そのうちスマホは3510万台と予測。スマホ比率が初めて80%を超える。
一方で、フィーチャーフォンと呼ばれる旧来型の携帯電話の出荷は激減し、スマホを加えた総出荷台数は13年度の4370万台(前年度比3.1%増)から、14年度は4260万台(同2.5%減)と前年割れを見込む。14年度以降は、スマホがフィーチャーフォンの減少分をカバーしきれなくなるわけだ。
通信機器メーカーの見通しをまとめた情報通信ネットワーク産業協会の調査でも、スマホ出荷台数は13年度の3206万台から17年度は3643万台と5年でわずか13.6%の伸びを予想。伸び率は年々低下し、17年度は0.6%増とほぼ横ばいになる見通しだ。
市場が転機にさしかかるなかで、スマホの主導権争いが世界規模で激しくなりそうだ。
米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を搭載したスマホが最大勢力となり、アプリの種類も「iPhone(アイフォーン)」でスマホ市場をリードしてきたアップルを超える規模に拡大。対するアップルは7インチサイズの小型タブレットで競合メーカーに追随するなど、スマホ・タブレット市場のパワーバランスが変化してきた。
13年にはさらに、グーグルが新型スマホを投入するほか、アマゾンやフェイスブックも自社開発のスマホを発売すると噂されている。フルキーボード付き端末ブラックベリーでいち早くスマホ市場を開拓したカナダのリサーチ・イン・モーションや、米マイクロソフトも起死回生を狙った新端末の投入を予定している。
KDDIとソフトバンクのアイフォーン販売攻勢で顧客流出が続くドコモは「(アイフォーンを)金輪際、売らないというわけではない」(加藤薫社長)と秋波を送っていたが、本格的にアイフォーン販売を検討しているもようだ。昨年11月の契約数が5年ぶりに、解約数が新規契約数を上回る純減となり、キラー端末の取り扱いが急務となってきたからだ。
仮に、ドコモがアイフォーンを発売すれば、順調に契約数を伸ばしてきたKDDIやソフトバンクにとって大きな脅威だ。出荷ペースが頭打ちになる国内スマホ市場で、台風の目となりそうだ。(芳賀由明)