ニュースカテゴリ:企業
サービス
活況呈す大型物流賃貸施設 アマゾンなどネット通販急成長で需要高まる
更新
首都圏の大型物流賃貸施設供給量
首都圏の大型物流賃貸施設市場が過熱してきた。アマゾンや楽天といったネット通信販売の急成長で、大型で最新の物流施設需要が高まっているためだ。プロロジスなど外資系専業大手に加え、今年から単独開発による本格参入を決めた三井不動産など国内不動産大手の動きも活発化している。競争過熱の中、勝算は-。
「新参者だが、これまでの豊富な用地情報や不動産開発ノウハウなどの強みを生かす」
大規模物流賃貸施設事業に本格参入する三井不動産の飯沼喜章専務は、こう意気込む。
同社はすでにGLプロパティーズと共同で、千葉県市川市に2013年末の完成を目指し、複数企業が利用する「マルチテナント型」の大型物流施設を開発中だが、今後は単独での開発を積極化。2017年度までに約2000億円を投じ、年4~5物件のペースで開発する。足元だけで、千葉県船橋市や埼玉県八潮市など首都圏6カ所、近畿1カ所の開発を行うという。
大型物流賃貸施設とは、延べ床面積3万3000平方メートルを超えるような規模のものを指す。免震対応や上階でもトラックが横付けしやすいなど最新の機能を持つため、小売りやメーカーなどが自社保有の物流施設戦略を見直し賃貸施設に入居する事例も増えている。
こうした事情を背景に、2013年は首都圏の大型物流賃貸施設が急増する見通しだ。米系不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE、東京都港区)によると、2013年は面積ベースで前年比約2.4倍の約134万5000平方メートルになる見込み。約148万平方メートルの大量供給があった08年以来の規模とあって、業界は活況に沸いている。
今後、三井不動産や三菱地所などプレーヤーの増加で、競争は激しさを増すのは確実だ。
「以前は、相対取引でも土地を確保できたが、今は、同じ土地に10社が入札に入ることもザラにある」
プロロジスの山田御酒(みき)社長は、用地確保が次第に困難となり、少しでも早く確保しようとする動きが強まっている現状を明かす。このため中長期的には、比較的安定といわれる賃料水準を上げずに好立地を確保し続けられるかが市場の課題だ。
東日本大震災以降、労務費や資材費は高騰している。「顧客獲得を考えれば、そうそう物流施設の賃料水準を上げたくない」(物流関係者)のが本音だが、建設コスト上昇分が転嫁できない状況が続けば、収益を圧迫しかねない。
とはいえ、オフィスビルなどと比べれば物流施設は建設が短期間で済む。また通販以外にも医薬やアパレルなど他の業種の需要が後に続くとみられ、施設不足の追い風は続きそうだ。
一方、テナント側の物流強化の動きも加速している。
楽天は2014年初に、前述の三井不動産などが千葉・市川で開発中の物流施設への入居を予定している。仏・物流システム大手「アルファ・ダイレクト・サービス(ADS)」の買収も表明しており、物流機能の強化を急いでいる。
背景にあるのは、ライバルの米アマゾンとの競争激化だ。自社で商品を大量に仕入れて物流拠点に集約、発送できるアマゾンと違い、楽天はネット上の「楽天市場」に出品する各店舗がヤマトホールディングスなど民間物流会社を使い、直接顧客に出荷するシステムが主流。顧客が複数の品物を注文した場合、各店舗が個別に発送するため「4回注文すれば4回待たなければいけない」(同社幹部)弱点があった。
これを克服するため、同社は複数店舗の商品を希望日時に一括で配送するサービス「楽天24」を推進中。必然的に、あらかじめ大量の品物を集約しておくことのできる自社の物流施設が必要で、10年には市川市に大規模な物流施設を開設した。今年11月には兵庫県川西市、そして来年には再び市川市に開設し、“自前”物流網の整備を急ピッチで進める。
さらに各物流拠点では、在庫管理や仕分け、荷さばきの効率化へADSの自動物流システム「シンデレラ」を順次採用。物流コストの低減も図る計画だ。
ネット通販は、すでに注文「翌日」の配達から、「即日」の配達が求められる力比べの時代に突入しつつある。物流を次元の違うスピードにまで加速させる技術革新の実現には、施設開発も無縁ではありえない。今年は、市場の発展を見極める重要な1年になりそうだ。(那須慎一、渡部一実)