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ビッグデータは“宝の山”か 日本企業が追撃、開発競争激しさ増す

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ビッグデータは“宝の山”か 日本企業が追撃、開発競争激しさ増す

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ビッグデータの世界市場予測  インターネット空間やデータベースなどの膨大なデジタル情報から新たな付加価値を生み出す「ビッグデータ」ビジネスが国内でも本格化しそうだ。NEC、富士通などが新サービスを開発、事業化に乗り出しており、各社とも2015年ごろまでに1000億円規模の事業を見込んでいる。

 ビッグデータ事業は米国が先行しているが、日本勢も追撃態勢に入った形だ。用途も社会インフラやセキュリティー、マーケティングなど多岐にわたるが、まだ事業は緒に付いたばかり。それでも“宝の山”となる可能性も秘めており、開発競争は激しさを増しそうだ。

 「自動車の位置やワイパーの動きなどの情報を集めるのは形式知。これに対しワイパーの使用状況や速さ、自動車の位置情報などをもとに、雨量や雨雲がどう動くかというのが暗黙知。複雑な情報から暗黙知を導き出し、真の情報価値にたどり着くのがビッグデータだ」

 昨年11月、都内で講演したNECの遠藤博信社長はビッグデータの本質をこう説明した。

 分かりやすい例では、昨年の米大統領選と、人気アイドルグループAKB48の総選挙だ。大統領選では米紙が、AKB選挙では日本のマーケティング会社が、それぞれ各種調査やネット上などにあるさまざまな情報を分析。次期大統領と、人気投票順位で上位16人のうち15人の予想を的中させて話題となった。

 市場拡大2倍予想 人材育成が急務

 ビッグデータは無数にあるデータを収集し分析した上で、未来を予測して解決策を示すことともいえる。これをビジネス化する動きが日本でも本格化してきた。

 NECは昨年11月、顔認証技術とビッグデータを活用したマーケティングサービスを始めた。店舗内の映像から年齢や性別、来店日時、購買商品だけでなく、同一人物かどうかも判別。何時ごろに誰がどの商品を買ったかを導き出す。

 これまでもPOS(販売時点情報管理)やポイントカード情報を併用して購買履歴を把握するシステムはあったが、ビッグデータを利用すればこれに動画像などの情報も加味、より詳細な購買情報が分かるようになる。

 これに加え、年内にもセンサー技術などと組み合わせた不審者監視や自動車の安全運転配信サービスなども商品化する計画だ。同社は昨年2月、全社横断の「ビッグデータ戦略プロジェクト」を立ち上げており、14年までに累計売上高1500億円を目標に掲げる。

 富士通も2009年にビッグデータ事業を組織化、昨年にはデータ分析の専門家らからなる「インテリジェントコンピューティング室」を設置。その成果として、将棋ソフトの開発ではアマチュア有段者レベルからプロレベルになったという。同社の川妻庸男常務は「これまで経験と勘に頼ってきたことをビッグデータで論理的に解析。価値の高いもの、新しい産業を生み出す力がある」と話す。

 事業化を予定しているのは、店舗内での顧客行動パターンから心理を分析してサービス改善を図るマーケティングや、交通情報を利用した都市情報や保険事業などで、15年度のビッグデータ関連事業で1000億円の売上高を目標としている。

 日立製作所も昨年6月にビッグデータの専門家集団「データ・アナリティクス・マイスター」を立ち上げた。これまでの機械類のメンテナンス情報などを生かして故障時期などを予測。当面は得意とする発電用ガスタービンや空調管理などの分野で事業化を先行。3年後の売上高を1500億円と見込む。

 活用法の確立必要

 米調査会社ガートナーによると、ビッグデータ関連の世界市場は12年の約280億ドル(約2兆5000億円)から、16年には2倍近くに伸びると予想。米国で先行したが、世界に波及するIT分野として期待されている。

 ただ、ユーザーにとって従来システムと比べた優位性や、具体的な活用例などが不透明なこともあって、「市場全体はまだおぼろげ」(NEC)だ。これを解消するには、情報分析力の向上だけでなく、経営への活用や、計画立案段階からのビッグデータ活用法をさらに磨く必要がある。

 このため、NECはユーザー各業界に精通した専門要員を14年度までに200人に拡大するほか、日立は20~30人規模の専門家を200人に増やし、富士通も専門の人材を現在の100人から大幅に引き上げる予定だ。

 IT(情報技術)ビジネスでは米国勢が先行するケースがほとんどだが、国内各社が米国に肩を並べるには、まず国内市場をしっかり確立することが求められる。(是永桂一)

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