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iPhoneまさかの苦戦、アップル失速 廉価版、5S…憶測呼ぶ
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米アップルの株価 米電子機器大手アップルが、看板製品のスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」の変調に苦しんでいる。
需要の落ち込みで生産調整に追い込まれたと伝えられ、廉価版や新モデルの発売も盛んに取り沙汰される。うなぎ上りだった株価も低迷し、アップルはてこ入れを迫られそうだ。
一部米メディアは先週、アップルが昨年9月に発売した「アイフォーン5」の需要が予想を下回っているとして、アップルが部品の発注量を当初計画より削減したと報じた。
とくにシャープなどが供給する液晶画面は、発注量が計画の約半分にとどまったという。
アップルはこれに対してコメントを控えている。ただ、アイフォーンの販売不振は以前からささやかれ、「5」の発売当時は700ドルを超えていた株価も下落。14日には500ドルを一時割り込み、時価総額で3割近くが吹き飛んだ。
米調査会社ABIリサーチは、17日に発表した世界のスマホ市場見通しで、2012年末で20%弱とみられるアップルのシェアは13年には22%へとわずかに増えるが、その後18年まで横ばいを余儀なくされると予測。首位の韓国サムスン電子は、昨年の33%から18年に45%まで上昇するとした。
激戦のスマホ市場では、各国で価格競争も熾烈(しれつ)になっている。アップルは値下げに走らずにブランドを守る戦略にこだわってきたが、「アイフォーンの機能に目新しさが薄れ、サムスンなど各社のスマホと見比べながら購入を検討するユーザーが増えた」(米IT業界関係者)。「5」は地図機能で起きた不具合も打撃となったとみられる。
そんな中、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、アップルが「5」の廉価版の発売を検討していると報じた。アップルのシラー上級副社長は「われわれの向かう方向ではない」と否定したが、市場では観測がくすぶり続け、アップルの最高経営責任者(CEO)をかつて務めたジョン・スカリー氏も、難局の打開に向けて「値下げに踏み切るべきだ」と促す。
一方、アップルの業績予想で定評のあるITアナリストのミンチ・クオ氏は、アップルが廉価版のほかに、「機能を高めた新モデルの『5S』も年内に投入する」と予想する。
一部の米ITサイトもアップルがアイフォーンの最新版のテストを始めたと年初に報じ、臆測を呼んでいる。
アップルは、23日に12年10~12月期決算を発表予定で、同社が携帯電話戦略で、どんな方向性を示すかも市場の関心を集めそうだ。(ワシントン 柿内公輔)