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トヨタ“超円高”でも黒字可能 コスト削減積み重ね、経営体質盤石に
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国内生産のもうけを示す平成25年3月期の単独決算で、5年ぶりの営業黒字を達成する見通しとなったトヨタ自動車。最大の要因は円安による輸出採算の改善だが、同社は今期に当初想定していた1ドル=79円の“超円高”でも、黒字化が可能な経営体質だったことを明らかにした。
リーマン・ショック(平成20年)後の構造改革が実りつつあり「強いトヨタ」の復活が間近になってきた。
「固定費を抑え、粗利益を増やす取り組みが浸透した。リーマン以降、年3千億円を超える収益改善が可能になった」。
単独営業損益が1500億円の黒字見込みとなったことについて、都内で会見した伊地知隆彦取締役兼専務役員はこう胸を張った。
昨年11月時点の単独営業損益見込みは200億円の赤字だった。今回改善した1700億円の内訳をみると、円安効果で1400億円、コスト削減で300億円。円安がなかったとしてもコスト削減だけで100億円の黒字になる計算だ。
工場では固定費削減の取り組みも進めた。大型の生産ラインを一気に導入する従来の方式を改め、需要変動に応じて自在に伸縮できるラインを開発。部品製造に使う金型の軽量化、材料のロスを削減できる金属加工技術の開発など自動車生産を細かく見直し、コスト低減を図った。その積み重ねが年3千億円のコスト削減というわけだ。
背景にあるのは、国内外で工場の増強、新設を続けたリーマン直前までの「拡大路線」の反省だ。19年3月期、20年3月期とも単独営業利益は1兆を突破したが、当時の為替は1ドル=110円台。伊地知取締役は「生産増のための設備投資が増え、販売収入の伸びが(減価償却などの)固定費で相殺された。円安での好業績だった」と分析した。
トヨタは昨年、世界新車販売台数が2年ぶりの首位となり、今年も991万台と過去最高の更新を計画する。市場環境の好転でさらなる販売増を見込み、世界初の1000万台超えも視野に入る。
ただ、20年に新車販売世界一を奪取した直後、米金融危機で戦後初の赤字に転落しただけに、欧米経済の先行きが見通せない中、来期以降の生産体制は慎重になりそうだ。