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ドコモ「dtab」に勝算はあるか ECサービスで販売拡大目指す
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消費者向け電子商取引市場規模の予測 NTTドコモが3月下旬に投入するタブレット端末「dtab(ディータブ)」を軸に、自社で展開する電子商取引(EC)サービス「dマーケット」の規模拡大をもくろんでいる。
ディータブの販売価格は9975円と1万円を切り、端末での収益を度外視してでもECの利用者を伸ばすことで収益を確保しようという戦略だ。ただ、米アップルの「iPad(アイパッド)」中心にタブレットの販売競争が激しさを増す中、ディータブが思惑通りに売れなければ絵に描いた餅になりかねない。コンテンツ販売で稼ぐためとはいえ、捨て身にも見えるドコモの戦略に勝算はあるのか。
「価格は(米アマゾン・ドット・コムのタブレットの)『キンドルファイア』よりも少し求めやすい。戦略的に設定した」
ドコモの加藤薫社長は都内で1月22日に開いた春商戦モデル発表会で、ディータブを前面に押し出してアマゾンに対抗する考えを鮮明にした。
ディータブは中国ファーウェイ製で、OS(基本ソフト)に米グーグルの「アンドロイド4.1」を採用。高速処理が可能なクアッドコアCPU(中央演算処理装置)や10.1インチの大型ディスプレーを備え、使い勝手の良さを重視した。
通常は2万5725円だが、ドコモのスマートフォン(高機能携帯電話)利用者を対象に9月末までのキャンペーン価格として9975円に設定。キンドルファイア(1万2800円)より2割以上も安い。
もっとも、ドコモでは初めてとなるWi-Fi(公衆無線LAN)専用モデル。回線収入が得られず、回線契約数の増加にもつながらないため、ドコモの幹部は「端末の販売だけでは赤字になる」と打ち明ける。
それでも格安価格でディータブを投入する狙いは、ドコモが2011年11月からスマホ向けに展開するdマーケットの利用者拡大にほかならない。端末よりもコンテンツの販売で収益アップを目指すアマゾンのビジネスモデルと「狙いは同じ」(加藤社長)。ドコモは、スマホに登録したIDを使えばdマーケットのコンテンツをディータブで利用できる仕組みを取り入れる。
dマーケットでは音楽約100万曲やビデオ7000点、電子書籍約4万8000点、ゲームなどのコンテンツを提供。一般商品の通販ショップ「dショッピング」をサービスの中核と位置づけるものの、商品数は約8万点にとどまり、日本では5000万点を超えるアマゾンの足元にも及ばない。
このため、ドコモは商品ラインアップの拡充を急いでいる。12年3月には有機野菜の販売を手がける「らでぃっしゅぼーや」を買収。さらに、衣料品のECサイトを運営する「マガシーク」(東京都千代田区)を傘下に収めるべく、株式公開買い付けを現在実施している。
取り組みはそれだけではない。スマホ向けの映画や音楽などのコンテンツをテレビでも楽しめるサービス「スマートテレビ」を3月以降に開始。小型端末をテレビに差し込めば、Wi-Fi経由でdマーケットのコンテンツやショッピングを楽しめるようにする。
スマホ向けのサービスをタブレット、テレビでも利用できる「マルチスクリーン」化を進めることで、ユーザーをECサービスへと誘導したい考えだ。
dマーケットの売上高は12年度に約200億円を見込む。ドコモは、品ぞろえの充実と利用できる端末の拡大を両輪にして、15年度に1000億円へ引き上げる目標を掲げる。
「戦略の方向性は正しい」。調査会社MM総研の篠崎忠征アナリストは、ドコモの狙いを評価する。ECサービスの利用者はパソコン経由が圧倒的に多いものの「画面が大きく機能の高いタブレットにシフトする可能性が高い」(篠崎氏)からだ。
野村総合研究所によると、2012年度の消費者向けEC市場は推計10兆2000億円の総額のうち、パソコン経由は約8割の8兆円程度。モバイル端末経由は約2割の2兆1000億円程度にとどまるものの、5年後の17年度には約2.4倍の5兆円に膨らみ、市場全体の3割近くに伸びる見込みだ。
12年秋以降、小型画面の製品が相次いだことでタブレットの国内需要は急伸。MM総研の推計では12年度は前年度比61.9%増の450万台になる見通し。
ただ、メーカー各社に加え、KDDIやソフトバンクモバイルもタブレットの拡販に力を注いでおり、ユーザーを囲い込むためには価格面の優位性だけでなく、ソフト面を含めたドコモの総合力が問われそうだ。(松元洋平)