SankeiBiz for mobile

トヨタ、リスク覚悟の「顔改革」 嫌われても…心に響くデザインで攻める

ニュースカテゴリ:企業の自動車

トヨタ、リスク覚悟の「顔改革」 嫌われても…心に響くデザインで攻める

更新

巨大なグリルにデザイン変更後(左)とデザイン変更前(右)のクラウンアスリート(右は提供写真)  トヨタ自動車がデザイン改革に取り組んでいる。「これからのクルマには、これが欲しいと思わせるデザインが重要」(豊田章男社長)との考えからだ。巨大なフロントグリル、鋭さを意識した“面構え”などを次々と投入し、外国勢に負けない看板づくりを目指す。「無難だが、個性と面白みがない」ともされたトヨタ車。個性を出そうという試みだが、果たして…。

 特徴ある顔づくり

 「社内で反対もあったが、私は早くこのクルマが欲しいと思った」。昨年末に約5年ぶりのフルモデルチェンジをした新型クラウン。発表会で豊田社長は自信を込めて話した。

 王冠をイメージした巨大なフロントグリルが特徴。従来の保守的なイメージを覆すことを狙った。「最初に見たときはびっくりした」(トヨタ首脳)と、社内にも当惑が広がったほどだ。

 高級車ブランド「レクサス」。昨年発売の「GS」「LS」などで、車体前面に「スピンドルグリル」と呼ぶ、2つの台形を組み合わせてひょうたんのような形に仕上げたデザインを採用した。

 高級車市場のライバル、独BMWは「キドニー(腎臓)グリル」と呼ばれる独特のフロントマスクがトレードマーク。BMWと同様に、特徴ある顔をつくることが目的だ。

 嫌われるリスク

 トヨタがデザイン重視を社外に宣言したのは昨年春。「つくれば売れるという右肩上がりの時代に、今売れるクルマにシフトしていった」(豊田社長)と、万人受けする無難な商品が増えた反省からだという。

 トヨタは強力な販売力と高品質を背景に販売台数を伸ばしてきたが、海外のライバル勢も燃費などの性能面で力をつけつつある。デザイン面ではドイツ勢が先行する一方、韓国勢が猛追。競争の激化でトヨタも動いた。

 従来は、役員ら数十人が出席していたデザイン審査のメンバーを新車の開発担当者を中心とした数人に削減。現場の感覚で決定する仕組みを始めた。

 幹部は「クルマの顔がつまらないなどといわれることがあった」とし「嫌われるかもしれないリスクを覚悟し、心に響くデザインを設計する」と話す。

 昨年フルモデルチェンジしたハッチバック車「オーリス」では、キーン(鋭利な)ルックと呼ぶ鋭い目つきのフロントマスクを採用。「個性」あるデザインの一環で「世界中どこでもトヨタ車と分かるデザインとして、導入していく」とする。

 賛否両論が渦巻き…

 数車種で取り組みが始まった新デザインだが、消費者の受け取り方はさまざまだ。「レクサスのスピンドルグリルは、評判が悪い。魅力あるクルマか」。昨年の株主総会では、株主から厳しい意見も飛んだ。

 新型クラウンについても「大きいフロントグリルはかっこいい」との声の一方で「上質な大人のクルマではない」(業界関係者)、「品格ある高級車の顔ではない」(50代会社員)と賛否両論が渦巻く。

 最近になってトヨタはスピンドルグリルについて「同じデザインは制約ができ、自由度が狭まる」として、次期モデルでは固執しない意向も示し始めている。

 世界販売1000万台が現実化しつつある世界最大の自動車メーカー、トヨタ。国内だけでも約60車種を販売する。高級車に特化しているBMWなどと違い「(トヨタのような)フルラインアップのメーカーは、もとから特徴を出しにくい。国内市場はデザインより、機能と価格だ」(市場関係者)との指摘もある。

 「強い印象のあるデザインは、1~2年後に魅力ある商品になる」と幹部は強調する。

 個人の好みがはっきり分かれるデザイン。今後、モデルチェンジを迎える車種でも「嫌われるリスク」にどう対処するか。改革の行方は不透明だ。(内山智彦)

ランキング