ニュースカテゴリ:企業
電機
シャープと鴻海「協議継続で一致」 サムスン加わり関係は複雑化
更新
台湾・鴻海精密工業が経営再建中のシャープに669億円を出資するとした資本提携交渉が26日で払込期限を終えた。1年の交渉期間があったにもかかわらずシャープ株の急落以来、交渉が停滞し、いったん白紙となった。
シャープの奥田隆司社長と鴻海の郭台銘会長が会談、「今後も協議する」と確認したが、今月上旬にシャープに出資を決めた韓国サムスン電子の出現もあり、シャープの経営環境が混沌としてきた。
シャープは26日、鴻海との交渉がいったん白紙となったことを正式発表。だが同社広報は「今後も両社で協議していく」と説明。しかし、交渉期限など詳細については明らかにしていない。
「片山会長も奥田社長も私はまったく評価していない」
鴻海の郭会長はシャープ幹部について、こう話しているという。新型液晶「IGZO(イグゾー)」など技術力の高さは評価するが、「ヒット商品につなげるマーケティング力が伴っていない」(郭会長)。鴻海と力を合わせれば、液晶をもっと売ることができる-というのが郭会長の主張だ。
鴻海との出資交渉が停滞した理由はシャープの株価低迷だ。一時140円台にまで下落しており、市場価格が取得価格を下回った場合、その差額を減損損失として計上を迫られる鴻海は二の足を踏んでいた。
主要取引先であるアップルの「iPhone(アイフォーン)5」の販売不調で、生産調整に入ったことで鴻海側も余裕がなくなったこともあるといわれる。
シャープの新たな出資先として現れた世界最大の総合家電メーカーのサムスンも、鴻海にとって意識せざる得ない存在だ。
「たった3カ月で出資を決めたサムスンは交渉上手。鴻海は1年かけてもまとめることができなかった」。サムスンは追加出資の可能性もあるとされるだけに、鴻海関係者は焦りにも似た危機感をあらわにする。
昨年12月末時点で自己資本比率が9・6%と「危険水域」に沈むシャープ。4月中旬から5月に予定される主力取引銀行からの役員受け入れは、みずほコーポレート銀行が同行出身で東京建物常務の藤本聡氏が送られる見通しで、三菱東京UFJ銀行も人選を進めている。
ただ、シャープの経営環境は複雑化しており、財務状況の悪化に伴い同社をめぐる鴻海とサムスンの動きが再び活発化するとの見方は強い。