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逆走するブロードバンド政策 都市部と地方の情報格差埋まらず
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政府は2015年までにブロードバンド(高速大容量)サービス普及率100%の目標を掲げているが、地方と都市部の情報格差は広がりこそすれ、是正された形跡はない。10年の目標だったブロードバンド・ゼロ地域の解消も実は達成されていないことが、総務省の調査で明らかになった。
東京から南に290キロメートル。黒潮洗う八丈島では、ソフトバンクの孫正義社長がいまも“島の大恩人”とたたえられている。
10年前、NTTグループが通信回線の大容量化を渋る中、孫氏がADSL(非対称デジタル加入者線)サービスの提供に名乗りをあげ、それをきっかけにNTT東日本の大容量海底ケーブル敷設につなげたからだ。
数年前までブロードバンドの主役だったADSLの契約数は光サービスの普及によって減少の一途だが、ADSLはNTTの通信回線がなければサービスできない。
当時、孫氏の要請に応じて渋々、伊豆七島向け海底ケーブルの容量を増強したNTTは、自らも光サービスを提供。孫氏のパフォーマンスに引きずられて採算の厳しい離島でサービスする羽目になったNTTからは怨嗟(えんさ)の声も聞こえたが、離島のブロードバンド化がビジネスライクでは進まない現実を浮き彫りにした。
家庭とブロードバンド回線を結ぶラストワンマイルを高速無線通信で実現するため、総務省が地方の通信事業者に周波数の一部を割り当ててサービスを始めた地域Wi-MAX(ワイマックス)は、思惑通りに普及していない実態が同省の調査からみてとれる。
大都市圏を中心に整備されてきたブロードバンド環境を地域レベルで推進し情報格差を是正するという当初の目的とは裏腹に、全国の約95%の市区町村には無線局がなく、当初事業計画を達成したのは52社のうち3社だけ。6社は撤退を計画しているという。
総務省が今秋にも追加で割り当てる周波数は、全国規模の事業者を選考対象とし、地域ワイマックス事業者は除外される見通し。
地域ワイマックス事業者は全国規模の事業者が提供する最大毎秒100メガビット以上の超高速サービスの提供は不可能となり、地方と都市部のブロードバンドサービスには大きな隔たりができることになる。
21日に都内で記者会見を開いた孫氏は、買収した携帯電話事業者、イー・アクセスの基地局をソフトバンクモバイルの高速データ通信サービス「LTE」で使えるようになったと説明。
しかし、都市部を中心に設置してきたイー・アクセスの基地局を活用できるのは当然、人口密集地が中心。人口密度の低い山間部や離島でその恩恵を受けることはほとんどなさそうだ。
トップダウンで離島にブロードバンドを引き込んだ孫氏はいま、人口密集地で「つながりやすさナンバーワン」を呪文のように唱える。都市部と地方の情報格差を埋めるはずだったブロードバンド政策は逆走しているかのようだ。(産経新聞経済本部 芳賀由明)