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一度はボツになったショットノート 「時代が企画に追いついてきた」
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ショットノートは、タブレット端末やスマートフォンを活用し、手書きのメモをデジタルで記録できる スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末を活用し、手書きのメモをデジタルで記録できるノートが注目を集めている。キングジムが平成23年2月に発売した次世代文房具「ショットノート」がそれだ。
携帯電話などで写真を撮ってメールする「写メール」やスマホに慣れ親しんだ20代の若者たちが中心となって開発した商品だが、さまざまなビジネスシーンで使い勝手の良さが評判となり、30~40代を含めた幅広い世代にユーザー層を広げている。
「ショットノート」は、キングジム開発本部商品開発部開発四課の遠藤慎リーダーが中心となって開発した。遠藤氏は「手書きメモやデザイン画をすっきりデジタル化して保存し、整理しやすくすることを目的にしており、手書きメモとスマートフォンが連携する新しいタイプのノート」と強調する。
スマホやタブレットの専用アプリを起動し、手書きノートをカメラで撮影するだけで、ノートを画面ぴったりにデジタル化して取り込む仕組み。ノートの日付と番号の部分はOCR(光学文字認識)で読み取り可能なので、アプリの多彩な機能検索で目的のノートをすぐに探し出せる。
また、「タグやタイトルなど、キーワードを付けておけば、検索や整理も簡単だ」(遠藤氏)という。
さらに、取り込んだノートは、そのままメールで送ったり、インターネット上のデータ保存サービス「Evernote(エバーノート)」に投稿して保存することもできる。
「ちょっとしたアイデアを思いついたときに書き残したメモをなくすことがよくあった」。遠藤氏は「ショットノート」開発の動機についてこう語る。デザインを担当していたときに、その作品や下書きしたものを共有するさいにも、「スマホのカメラで撮影し、後でやりとりすることも『写メ』世代ではよくあった」といい、「ショットノート」は、遠藤氏にとってまさに「あったら便利」な商品だった。
22年中ごろ、遠藤氏は若手のデザイナーや開発者らを集めて開いた「お茶会」で、新製品のアイデアを出し合うのが習慣になっていた。キングジムでは、若手社員が発案した企画で立て続けにヒット商品が生まれ始め、自由な発想をぶつけあう風土が育ちつつあったからだ。
そのきっかけは、20年にヒットした印字機能のないワープロ「ポメラ」だった。「ポメラ」はテキスト入力機能だけに特化した新しいメモ帳で、「電源をONにすると即起動するので、アイデアがひらめいた瞬間を逃さない」(同社)という便利さと手軽さが好評でヒットにつながった。
遠藤氏は「この商品が生まれてからは、社内に『新しいことをやっていいんだ』という雰囲気が盛り上がった」と強調する。遠藤氏が「お茶会」や「井戸端会議」と称する商品開発ミーティングを頻繁に開くようになったのもこのころからだ。
遠藤氏らは、商品開発のコンセプトを「スキルアップ文具」と掲げ、ノートの取り方や活用術が上達するノートカバーを考案し、ヒットを飛ばした。
その後、勢いに乗った遠藤氏は、「ショットノート」の前身となる商品企画を提案するが、このときは採用されなかった。「ボツになったのは、企画を提案するタイミングが早かったため。まだ、スマホが今ほど普及しておらず、市場が発達していなかった」と遠藤氏は振り返る。
しかし、アップルの「iPhone(アイフォーン)4」の発売でスマホブームが到来。国内でも、スマホで写真を撮る世代の人口が増えていくと、商品開発をめぐる社内の雰囲気がまた変わり始めた。
スマホブームに目を付けた経営陣から「何か良い商品企画はないか」との声が聞こえ始めたからだ。遠藤氏らは満を持して「ここにあります」と進言した。一度はボツになった「ショットノート」の企画を示すと、今度は、経営陣の期待を込めた「GOサイン」が出た。
「時代のほうが、企画に追いついてきた。企画書を出すタイミングを間違っただけで、中身には自信があった」と遠藤氏。気の合う仲間たちと近所のカフェなどで開く「お茶会」は今も続いており、「3つくらいのアイデアを仕込んでいる」という。次なるヒット商品の開発に向けた若者たちの試行錯誤はすでに始まっている。