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自動車部品でも“韓流” 韓国企業が日本に攻勢かけるワケ

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自動車部品でも“韓流” 韓国企業が日本に攻勢かけるワケ

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韓国の現代自動車が公開した高級スポーツクーペのコンセプト車「HND-9」=3月28日、韓国・京畿道の韓国国際展示場(古川有希撮影)  韓国企業が、中部地区を拠点として日本の自動車産業との取引を増やそうと攻勢をかけている。自動車部品メーカーの共同営業拠点や、自動車部品向け鋼管の製造・販売子会社の設立など、日本メーカーへの売り込み態勢を着々と整え始めた。電機製品に続き、世界で存在感を増しつつある韓国の自動車業界。トヨタ自動車のお膝元で“日本進出”の橋頭堡(きょうとうほ)を築けるか。

 日本に続々と拠点

 「韓国製の部品は品質も評価されている。グローバル化時代、競争力のある部品を使う流れは強まるはず」。韓国の政府系機関、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の金鉉泰・名古屋貿易館長は話す。

 日本の自動車産業へのセールスに向けた韓国の活動は活発化している。

 KOTRAは5月、韓国の中小自動車部品メーカーの共同営業拠点を名古屋市内に開設する。同様の拠点は米国デトロイト、ドイツのフランクフルトにあるが、日本では初。8社程度が入居する。

 さらに、今秋には名古屋港に部品メーカー共同の物流拠点も開設予定。物流の集約でコスト低減を図る。営業、物流の両面で態勢を整え、日本製より15~20%コスト安とされる韓国部品の優位性をアピールしていく考えだ。

 大手企業も連動する。韓国最大の鉄鋼メーカー、ポスコの日本法人は、自動車部品向け鋼管の製造・販売子会社を三重県四日市市内に設立した。

 既存の物流センター内で、来年初めの稼働を目指し、顧客の要望に応じて鋼材を加工する生産設備をつくる。ポスコ日本法人の広報担当者は「サービスの質をより高めたい」と話す。

 グローバル化、災害で加速

 韓国企業攻勢の背景には、自動車メーカーの部品調達に対する姿勢の変化がある。新興国市場が先進国を追い抜くなど、自動車の生産、販売は海外にシフト。商品開発には迅速、低コスト化、効率化が重視されるようになり、従来の取引先にとらわれず、調達する流れが強まった。

 さらに、東日本大震災やタイの洪水被害など自然災害による部品供給網の寸断が、この流れに拍車をかけた。リスクに備え、自動車メーカーは、部品の調達先を分散する必要性に迫られた。

 2000年初頭にも日本に駐在したKOTRA名古屋貿易館の金館長は「10年前の営業は簡単ではなかった。今は日本メーカーの『系列』がなくなりつつあり、環境が変化している」と話す。

 トヨタ、日産などに迫る

 KOTRAは2009年、トヨタ本社で部品の商談会開催にこぎつけた。その後、日産自動車、三菱自動車、ホンダ、スズキなどとの商談会も随時開催。呼応するように、2012年の韓国自動車部品の対日輸出は7・9億ドルと、この3年間で2倍超に急増した。今年も主要カーメーカーとの商談会が予定されるなど、今や商談会は定例化しつつある。

 「世界一のカーメーカー、トヨタへの納品は韓国企業の夢だ」。KOTRA関係者は語る。

 主要ターゲットに見据えるのはトヨタだ。部品メーカーの合同営業拠点を名古屋に設けるのも、トヨタグループを意識したゆえんだ。

 鉄鋼メーカー、ポスコは昨春、トヨタグループに部品を納入するメーカーでつくる協力団体に、海外の鉄鋼メーカーで初加盟。「トヨタ系」として、日本での売り込みを強化している。

 ウォン安を背景に、世界販売を伸ばしてきた現代自動車などの韓国メーカー。ただ、最近のウォン安修正で業績に影響が出始めている。部品メーカーの海外進出には、現代自以外との取引も増やし、経営基盤を安定させようというもくろみがあるとの指摘もある。部品で“韓流”は浸透するか。動向が注目される。(内山智彦)

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