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スカイマーク、国際線で“脱皮” 全座席が上級クラス、料金は半値以下
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スカイマークの業績 中堅航空会社のスカイマークが仕掛ける国際線への進出計画が具体化してきた。大手の牙城である長距離の主要路線で超大型機を飛ばし、全席を上級クラスに限定するという大胆な試みに向け、操縦士の訓練など準備を着々と進めつつある。
一方で新たに近距離国際線への参入の検討も始めた。格安航空会社(LCC)の台頭に押され、業界屈指の収益力に陰りがみえ始めたなかでの大幅な事業拡大となるが、西久保慎一社長は「勝算はある」とひるまない。
フランス南部のトゥールーズにある欧州航空大手、エアバスの本社で、日夜訓練に励む日本人の姿がある。スカイマークが派遣した操縦士たちだ。彼らはここで整備士とともに訓練を重ね、エアバスの超大型機「A380-800」の免許を取得する予定だ。
一方で8月には本社に実機に極めて近い環境で操縦体験ができる「フライトシミュレーター」と呼ぶ模擬飛行装置を導入し、日本でも常時訓練できる環境が整う。順調に行けば、来年には「SKY」の文字と星のマークがついたスカイマークの機体が登場するはずだ。
「スーパージャンボ(巨象)」の愛称を持つA380は、史上最大のサイズに世界初の総2階建てで、ファースト、ビジネス、エコノミーの3クラスなら525席が搭乗可能。同社による最新の想定では、まずは成田空港と米ニューヨークを結ぶ路線に就航する見通し。将来的には就航都市を4~5に増やし、国内線と国際線の売り上げを半々にする青写真を描く。
日本と欧米主要都市を結ぶ路線は、全日本空輸や日本航空の金城湯池で、真っ向勝負しても勝ち目は薄い。そこで考え出したのが、大量の客を運べる超巨大機のA380を導入して1席当たりのコストを下げ、合わせて全席をエコノミーより座席間隔が広いプレミアムエコノミーとビジネスに限ることだった。
A380ならそれらに限定しても380席程度を確保できる。想定する料金はビジネスで40万円以下、プレミアムなら20万円以下。ビジネスで50万~100万円する日系大手の半値以下だ。同社は約6割の搭乗率で利益を出せるとみている。
もちろん、リスクはある。ただでさえ販売力や米国の知名度で大手に比べて劣るなか、上級クラスのシートを大量に売りさばくのは簡単ではない。
さらに同社はA380に加えて、発着枠に限りがある羽田空港発着の国内幹線用に、同じエアバスのA330-300も導入する計画で、近距離国際線も視野に入れる。2017年までの導入数はA380だけで6機。うち3機はリースではなく購入する。A380のカタログ価格は約280億円。いかに財務内容が良好とはいえ、多大な投資リスクが伴う。
それでも西久保社長は「後発の航空会社は大手の隙を狙い、割高なものに対し適正価格で提供すべき」と意に介さない。
もっとも、心配の種は尽きない。保有機材の種類が増えることは、機材を1機種に絞ってコストを抑えてきた同社の「勝利の方程式」を崩すからだ。
かつて浮きつ沈みつしていた同社の経営が改善したのは、300席クラスのボーイング767-300ERを退役させ、小型機のB737-800に統一した09年以降。大幅なコスト削減に成功し、12年3月期の営業利益率は19%と世界屈指のレベルに達した。機材の種類が増えれば、せっかくの高収益体質が揺らぎかねない。
機種を増やすことによるコスト増のリスクに対してスカイマークの西久保社長は「統一のメリットは15機以上になると薄れる。(すでに15機以上保有しており)こだわる必要はない」と、戦略転換の妥当性を主張する。
スカイマークと同様に機種を絞って低価格を実現するLCCが業界を席巻しているとはいえ、事業範囲は乗員の交代や手厚い機内サービスの必要がない近距離にとどまる。西久保社長は「長距離には長距離に適した機材とビジネスモデルがある」と言い切る。
同社は規制緩和を背景にした新興航空会社の第1号として、エイチ・アイ・エス(HIS)の沢田秀雄社長(現会長)らが1996年に設立したが、なかなか経営は安定しなかった。IT企業の経営者から転じ、2004年に経営を引き継いだ西久保社長も試行錯誤に明け暮れた。当時生まれた新興航空会社の中で、今も独立系の地位を守っているのは同社だけだ。
畑違いの業界から来て辛酸をなめ尽くしただけに、業績が上向いても脳裏から危機意識が消えることはないという。国際線進出を打ち出したのは10年で、LCCが台頭する以前から検討してきたことだ。
西久保社長は「何より大事なのは、つねに『脱皮』するベンチャー精神」と、失敗を恐れないことの大切さを強調する。
LCCの台頭に押され、13年3月期は営業利益が前期比約68%減となる見通しだ。収益力が高いうちの国際線進出は絶妙のタイミングともいえる。もくろみ通り「脱皮」し、新たな収益の柱を打ち立てられか。第3の創業の成否を業界他社も注視している。(井田通人)