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老舗ゲーム企業、活路を模索 ソーシャル全盛…ドラクエでも苦戦
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「ドラクエX」 スマートフォン(高機能携帯電話)の普及を背景にソーシャルゲームが幅広いユーザーを獲得する一方、老舗ゲームソフトメーカーは収益悪化に直面し、活路を模索している。
スクウェア・エニックス・ホールディングス(スクエニ)はトップ交代に踏み切り、ソフト開発の見直しを断行。カプコンは小学生向けソフトの開発に本腰を入れ、ユーザーの裾野の拡大を狙う。ただ、ゲーム以外にネット閲覧やメール、多様なアプリケーション(応用ソフト)も楽しめるスマホやタブレット端末との間で「個人の時間」を奪い合う構図の中、ゲーム専用機向けソフトの復活は容易ではない。
「やるべきことはやってきたつもりだったが、業績が一向にさえない。私の力が及ばずということだ」
スクエニの和田洋一社長は3月26日、東京都内で記者会見を開き、6月下旬の株主総会後に退任し、後任に松田洋佑最高財務責任者(CFO)を充てるトップ人事を発表した。
同社はこの日、2013年3月期の連結最終損益が過去最悪となる130億円の赤字(前期は60億円の黒字)に転落する見通しになったと発表。和田氏は事実上、引責辞任に追い込まれた。
業績の足を引っ張ったのは、欧米向けに開発した家庭用ゲーム機用の大型ソフトの不振だ。12年11月発売の「ヒットマン アブソリューション」は450万~500万本、13年3月発売の「トゥームレイダー」は500万~600万本の販売を13年3月期中に想定。計画上は8~9割程度の数値にとどめたにもかかわらず、「さらに下回る結果となり、流通対策費も追加発生して収益を圧迫した」(和田氏)という。
激しい競争の下、ヒットが見込めない新作ソフトの発売中止を決めたほか、1人用と複数の人数で遊ぶ2つのパターンを用意していたゲームの仕様をどちらかに一方だけにするなど、開発スタイルの見直しも決断。既に投じた開発費用の損失処理などで13年3月期に約100億円の特別損失を計上する。
ゲーム雑誌出版のエンターブレインの推計によると、12年度のソフトの国内販売額は前年度比1.2%減の約2691億円。その中で任天堂の「とびだせ どうぶつの森」は300万本超も売れた。
動物が住む村の住人となり、会話や村での生活を楽しむ内容で、他のプレーヤーとの交流を楽しむソーシャルゲームの要素も取り入れたことが大ヒットの要因の一つとされる。
一方、シリーズ初のオンラインゲームとしてスクエニが12年8月に発売した「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族オンライン」は12年度のゲームソフト販売本数の上位8位に食い込んだものの、ゲーム業界の関係者の間では「期待ほど伸びていない」との見方が少なくない。
当初予想を下回りながらも13年3月期の連結最終損益予想が前期比3.3%減の65億円と、業績が堅調にみえるカプコンも、ソフトの販売が伸び悩んでいるのは変わらない。
人気シリーズの新作ソフトの発売延期などが響き、13年3月期の販売本数は1400万本と、11年3月期の2050万本から約30%も落ち込む見込みだ。
カプコンはてこ入れに向け、ユーザーの裾野の拡大に力を入れる。男子小学生向けの新作ソフト「ガイストクラッシャー」を今年の年末商戦に投入する計画を2日に発表。同社が得意としてきたアクションゲームのノウハウをつぎ込み、「親子で楽しめる魅力あふれるゲームを目指す」(一井克彦専務執行役員)という。
ゲームを核にアニメやマンガ、音楽、玩具など多様な形態で売り込み、収益を幅広く稼ぐヒットコンテンツに育てる戦略だ。
さらに、年末に投入されるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の次世代ゲーム専用機「プレイステーション(PS)4」向けのソフトが、老舗ソフト会社にとっては大きな勝負どころになる。
カプコンは既にPS4向けの新作「ディープダウン」の開発に入っており、「これまでのゲームソフトとは一線を画す新次元の体験を提供する」(同社の開発担当者)と意気込んでいる。
これに対し、スクエニは具体的な業績改善策をまだ打ち出せていない。再建を託された松田氏は会社の将来像について「クリエーティビティー(創造力)と利益を両立できる会社」を思い描く。「環境変化が激しい中で伸ばすものには資源を投入し、だめなものは見直す」とも語り、まずは事業や組織の再編に手を入れる方向だ。
金融業界出身の松田氏は1998年に前身の旧スクウェアに入社した後も、財務畑ひと筋で歩んできた。松田氏を後任に指名した理由について、和田氏は数字を見る目に加え、「意志の強さ、決定力」を挙げたが、ヒットコンテンツを生み出すリーダーシップを発揮できるかどうかは未知数だ。(米沢文)